感情を入れずにゆっくり子どもと話し合う

 そういう感情的に叱ったことは、いい思い出として残っていません。
 大人になってから息子に「あのときはごめんね」と謝りましたが、子どもというのはありがたいもので、「何のこと? 僕はお母さんに叱られたことないよ」と言ってくれました。

 だから、今のお母さんにも、叱るときにお母さんの感情が入っているといけないので、感情を入れずにゆっくりとお子さんと話し合ってくださいって言っているんです。

 頭ごなしに叱ると、子どもも反発しますので、どんな場合でもまずは子どもの話を聞いて受け入れること。子どものほうも話しているうちに自分も悪いことをしたと気づいて、「ごめんなさい」という言葉が出てきます。

 話をよく聞いてみると、叱らなくてもいいこともあります。
 息子が友達と屋根の上に登って遊んで怒られて帰ってきたことがあるのですが、よく聞いてみると、息子は登っていなかったって。

 こういうことも話を聞いてみないとわからないこと。話をよく聞いて事実を見極めて、それから子どもと話し合うということです。

 伝えるときもくどいのはダメですね。
 大人でもくどいのはきらいでしょう。
 話すチャンスをみて、言葉も工夫して、というのがいちばんですね。

 親だから子どもに教え諭すということは、自分が育てるという気持ちが強いんですね。
 だけど、子どもは神様からの授かりもの。
 みんなで一緒に育てるというような大きな気持ちでやっていくとよい方向にいくような気がします。

93歳の集大成書籍への想い

 このたび、数々の方にお世話になりながら、わたしがこの20年あたためてきた「透明」をテーマした書籍『限りなく透明に凜として生きる』を発刊しました。

 ずっと、このことを話したかったの
 ずっと、このことを書きたかったの
 ずっと、このことを伝えたかったの
 透明のこと。

 いちばん大事なのは、待つことです。
 母性に立ち返るとき、問題は自然に解決します。
 「いのちのうつしかえ」のとき、人も透明になるのです。

 透明だと、ほんとうに、生きやすい。
 何かになろうとしなくても、
 それは自分の中にすでにあるものです。
 透明になって真実に生きていれば、
 それがいつか必ず真実となってあらわれます。
 だからわたしたちに今できることは、
 ただ精一杯、真面目にていねいに生きていく、
 これだけだと思うのです。

 よろしければ、一度お読みいただけると幸いです。
(次回へつづく)

<著者プロフィール>
佐藤初女(さとう・はつめ)
1921年青森県生まれ。青森技芸学院(現・青森明の星高等学校)卒業。小学校教員を経て、1979年より弘前染色工房を主宰。老人ホームの後援会や弘前カトリック教会での奉仕活動を母体に、1983年、自宅を開放して『弘前イスキア』を開設。1992年には岩木山麓に『森のイスキア』を開く。助けを求めるすべての人を無条件に受け入れ、食事と生活をともにする。病気や苦しみなど、様々な悩みを抱える人々の心に耳を傾け、「日本のマザー・テレサ」とも呼ばれる。1995年に公開された龍村仁監督の映画『地球交響曲<ガイアシンフォニー>第二番』で活動が全世界で紹介され、シンガポール、ベルギーほか国内外でも精力的に講演会を行う。日本各地で「おむすび講習会」を開くとすぐ満員になる盛況ぶり。アメリカ国際ソロプチミスト協会賞 国際ソロプチミスト女性ボランティア賞、第48回東奥賞受賞。2013年11月の「世界の平和を祈る祭典 in 日本平」でキリスト教代表で登壇。チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ法王と初対面。その際、おむすびをふるまう。『おむすびの祈り』『いのちの森の台所』(以上、集英社)、『朝一番のおいしいにおい』(女子パウロ会)、『愛蔵版 初女さんのお料理』(主婦の友社)、『「いのち」を養う食』(講談社)など著書多数。