20代高学歴女性を洗脳する<br />ワンマン社長の「人心管理術」(上)若手女性社員が笑顔で頑張る姿は、それだけで華がある。そんな企業には先進的なイメージがあるが……。Photo:taka-Fotolia.com

 今回は、前回紹介したエピソード(「20代高学歴女性を飼い殺す大企業のホンネ」(上)(下))の続編となる。筆者がインタビューを行った男性(A氏とする)は、数年前大規模なリストラを行った中堅広告代理店(正社員数600人)で、事業部長(46歳・男性)をしていた。

 A氏は、前職でリストラが行われたとき、創業経営者である社長から命じられ、自らが責任者を務める部署に在籍していた正社員130人のうち、70~80人から退職届を取った。このリストラは、23歳~28歳の社員たちをターゲットにしたものだった。

 これをきっかけにA氏は、会社の上層部に不信感を強く抱き、依願退職した(この間の事情は、筆者の以前の連載の記事『未来ある20代社員80人が涙した壮絶リストラの内幕 元事業部長が懺悔する「追い出す側」の奔放な論理』を参照してほしい)。

 それから1年半後、新天地(広告代理店、正社員数500人)で働くこの男性に改めて取材をした。A氏は、当時の状況に今も強い憤りを感じており、こうした「闇」を抱える企業社会に対して、深い問題意識を持っていた。特に、以前の職場にいた高学歴の20代女性社員の価値観について、危機感を抱いている。筆者は今回も、その部分に焦点を合わせた聞き取りを試みた。そこからは、カリスマ創業経営者の「行き過ぎた宗教的な人心管理」が見えてくる。


「女性が輝ける職場をつくろう」
と宣伝するワンマン企業の目的とは

20代高学歴女性を洗脳する<br />ワンマン社長の「人心管理術」(上)前回に続き、A氏に前職の職場における「異様な状況」を聞いた

A氏 社長たちは、マスコットをつくったわけ。20~30代の高学歴な女性社員や、就活をする高学歴な女子学生が注目するような……。これが社長の今の側近である、50代前半の女性。役職は執行役員。創業メンバーだから、社長とは阿吽の呼吸で進んでいるみたい。社長は信用のおけない創業メンバーは、次々と辞めさせたから。

 この女性は、あるプロジェクトを社内で立ち上げた。ビジネス雑誌などで話題の女性経営者などを招き、社員向けの講演もした。それが新聞などで紹介されたから、彼女は一躍話題の人に。役員たちが連日、社内のイントラなどで全社員にそのことをアナウンスした。