日経新聞が、1月7日朝刊の1面と関連記事2ページを使い、年金制度改革に関する研究会報告を発表した。報告に関わったメンバーは、論説委員など日経社内の論客たちと、宮島洋早大教授、西沢和彦日本総研主任研究員、土居丈朗慶大准教授ら外部有識者3名。新聞社が、こうした具体的な制度改革案を提示することの意義は大きい。その努力は素直に評価したい。

 日経案の骨子は、「基礎年金の財政運営を社会保険方式から税方式に移行させ、給付総額19兆4000億円(2009年度)の財源すべてを税金で賄うこととし、現在保険料を充てている12兆円分を消費税に置き換える。このため消費税率を5%前後引き上げる。保険料を廃止するので全体の負担は変わらない」ということだ。

 全額を消費税で賄うことが、この案の最大の特色であるが、今後年金給付が増える中で、必要財源はさらに増えていくかもしれない。上がる部分については、税率を上げるか給付額を下げるかを選択させて、あくまで消費税で負担していくべきだ、という考え方になっている。

消費税増税推進の
片棒を担ぐ危険性もある

 この案をどう評価するか。まず、税方式にすること自体は良いことだと思う。保険料を個別に徴収する方式は手間もかかり、不公平が発生しやすい。経済的に困っていて本来なら将来年金の必要性が大きいかも知れない人こそが、保険料を払えずに無年金者になってしまう現行の制度は良くない。考えてみると、加入期間が25年に1月でも欠けると無年金といったことをはじめとして、現行制度はかなりひどい制度だ。加えて、年金記録問題を見ると制度の運営面まで信用できなかったということなのだ。現行制度を根本的に改める意義は大きい。保険料として別途徴収する現行方式の方が良いという理由は、現行の年金官僚組織の温存以外に想像しにくい。

 ただ、追加の財源を消費税に限るという議論はいかがなものか。記事の図解を見る限り、日経案では、改革後も、従来から税財源としてきた7.4兆円分の税投入は変えていない。この7.4兆円の中には消費税以外の税源も含まれるわけだから、結局、年金に消費税をしわ寄せさせて、一般的な財源のためにも消費税の増税を活用する道は開かれている。
 
 税全体のバランスを検討する中で、消費税率の引き上げが決まってもいいが、年金と消費税を直結させる必然性はない。お金に色はついていないから、年金財政が消費税で満たされると、消費税増税がなければ回っていたかも知れない税金が他の用途に回ることになる。消費税の方が基礎年金の保険料(定額)よりも逆進的ではないと言うのはその通りだが、逆進性や「格差」が問題なら、所得税を財源にする方がもっといい理屈だ。