「ストレスをかける教育」が人を伸ばす

奥田 石坂さんがいろいろと提案するけど、お父さんの答えは「バカ野郎!」「ふざけんな!」ばかりですよね(笑)。

石坂 奥田さんの『世界に1つだけの子育ての教科書』にある「ストレスをかける」という教育だったのかも。自分で何かを変えられる環境でストレスをかけられたからおもいきって行動できた。

奥田 そうなんです。世間の多くの人は「ストレスは悪」と思ってるけど、100%間違い。むしろ、やたらほめるほうが子どもをダメにする!

石坂 私、子どもの頃からほめられたことなんて一度もない。「普通の」育児書に書いてある「ほめて育てる」なんて一切ゼロ!(笑)。

奥田 「普通の」というのは、僕の本が普通ではない、ということですね(笑)。

石坂 うん、「革命」ですよね。ほとんどのお母さんはギョッとするんじゃないですか。
 でも、「ほめない子育て」が私にとってはよかったのかも。私が何か提案すると、「バカ野郎」「ふざけんな」と即否定されたのですが、今から振り返るとすべて受け入れてくれている。「NOという許し」だったんですよね。

人生で初めて体が硬直して動けなかった瞬間

奥田 本を読んでいて印象深いのが、社長就任後1年目の新年会。そこでお父さんが挨拶するでしょう。

石坂 年頭挨拶は、いつもなら経営環境の話や事業の方向性について話すんですが、そのときは、ダイオキシン騒動後のバッシングで、会社が“絶体絶命の窮地”に追い込まれていたとき。前年に私が1年間の「お試し」社長になって、新しいプラントを立てる許認可をとったり、3つのISO認証を統合取得したり、といろいろあったんです。そこで父が「社長は相当がんばってくれた」と言ってくれた。

奥田 どう思いました?

石坂感情云々より体が硬直して動けなかったんです。父がこんなことを言うのかという驚きもあったし。

奥田 それも直接評価するわけではなく、社員全員に向かって言っている。このやり方はハートに火がつきます。そういうことが計算ではなく自然にできる人なんでしょう。「ほめて育てる」を実践している平均的なお父さんにすれば、腹が立つでしょうね。ほめて育てても、思春期になれば、他の男を好きになり、父親の言うことなんか聞かなくなる。手塩にかけたつもりでも、父親の顔なんか見たくもないわ、という人すらいる。普段は厳しくても1万回に1回の「ほめ」で心はキャッチできる。この親子関係にして、いまの石坂産業があると思います。いや、うらやましい。
(「その2」へつづく)

<著者プロフィール>
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ! 先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。