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“ドル離れ”は一過性の現象に留まらず!
地殻変動の口火を切る「円高ショック」

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第96回】 2009年10月6日
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 足元の為替市場で「ドル安・円高」の傾向が鮮明化している。9月下旬、円は、1ドル=90円の壁を突破して80円台に突入した。その後、直近では、80円台でのもみ合いの状況が続いている。

 投機筋の円買い・ドル売りのポジションが積み上がっていることもあり、短期的に急激な円高が進むとは考えにくいものの、年末から来年春先にかけて、1ドル=85円の攻防になると見られる。中期的には、円高・ドル安傾向が続くと予想する。

 この背景には、米国景気の低迷が長期化するとの懸念が強まっていることがある。景気の低迷が続くと、低金利が長期化し、投資資金が金利の低いドルからブラジルレアルなどの高金利通貨に向かいやすくなる。

 実際、ヘッジファンドのマネジャー連中は、金利が低いドルを嫌って、ドルから豪ドルやブラジルレアルなどに資金を移動しているようだ。そのため、現在の為替市場では、ドルがほとんどの通貨に対して弱含みになっている。

 そんなドル全面安のなかで、経常収支が黒字となっており、しかも財務大臣が「円高になっても当面介入はしない」と発言したため、一気に円が買われたのである。

 もともと日本は貿易黒字の基調を続けており、基本的にはしっかりした基盤を持った通貨だ。それに加えて、日米の金利差が極端に縮小したため、円買い・ドル売りが出難い。

 そこへ、藤井財務大臣の“円高容認”とも取れる発言があった。それは、為替投資筋にとって「またとない収益機会」に見えたはずだ。ヘッジファンドなどが一斉に90円の壁に挑戦し、見事にその壁を破った。

 今後の為替市場の動向を占う上で、最も重要なファクターは米国経済の動向だ。米国経済の回復期待が高まると、市場参加者は金利の上昇を読み込むため、ドルは買い戻される。

 一方、景気の回復が遅れるようだと、ドルは一段と売れ込まれることも考えられる。現在の米国経済を見ると、短期的には市場を動かす大きな材料が見当たらないことに加え、投資筋の円買いの持ち高はかなり膨らんでおり、円が急速に買われる可能性は低いと見る。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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