「自分に向かう謙虚さ」を持とう

奥田 お父さんが考えた会社の理念は、「謙虚な心 前向きな姿勢 努力と奉仕」でしたよね。

石坂 私が「お試し社長」になったとき、うちの会社には理念がなかった。それでお願いしてつくってもらったんです。最初はピンとこなくて、会社っぽくないなと(笑)。

奥田 「謙虚」というのがお父さんらしい。謙虚という言葉について、世の中の多くの人は誤解している。職人として謙虚さは、営利優先のために誰にでも頭を下げるという意味ではない。受けた依頼を120%まっとうするために、技術を上げよう、腕を上げようという任された仕事に向けての謙虚さなんです。

石坂 父もそういうつもりで謙虚としたのかも。理念のほかに事業方針として、「機敏な決断と実行力」というものもありました。父が私にくれた言葉だと思っていますけど。

奥田 言葉だけじゃなくて行動がともなっている。地域から強烈な反対を受けて、焼却を止めて15億円投資してつくった最新型のダイオキシン対策炉を廃炉にするでしょう。

石坂 父は「地域に必要とされない仕事をしていても仕方ない」と考えていました。でも、15億円というのは父にとって人生をかけた究極の投資であったことは間違いありません。15億円もの投資を行うのは大変な覚悟だったのです。
経営者となった今だからこそわかりますが、15億円の連帯責任を負うというのは簡単にできることではありません。