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よい経営はよいガバナンスから生まれる(下)

加護野忠男・甲南大学特別客員教授/神戸大学名誉教授

加護野忠男氏は、経営戦略の研究者として、日本、欧米、アジアの企業経営を観察してきた。前回に続き、2014年末に発表された日本版「コーポレートガバナンス・コード」原案への評価に始まり、コーポレート・ガバナンスにまつわる課題について、マネジメントの文脈から考える。

加護野忠男(Tadao Kagono)
1973年神戸大学大学院経営学研究科博士課程中途退学後、神戸大学経営学部助手、講師、助教授を経て、88年神戸大学経営学部教授。98年神戸大学経営学部長ならびに大学院経営学研究科長。2011年に神戸大学を退官。主要な著作に、『日本型経営の復権』(PHP研究所)、『新装版 組織認識論』(千倉書房)、『経営はだれのものか』(日本経済新聞出版社)等が、また共著に『アメーバ経営が会社を変える』 (ダイヤモンド社)、『ゼミナール経営学入門第3版』(日本経済新聞社)、『コーポレート・ガバナンスの経営学』(有斐閣)等がある。

英米資本主義vs
欧州資本主義

――2008年のリーマン・ショック以降、市場原理主義への批判、グローバリズムへの警鐘、株主価値経営への反省が世界のあちこちで噴出しています。こうした市場原理と株主主権に基づいた資本主義に対して、ジョセフ・スティーグリッツやポール・クルーグマンなどのノーベル賞経済学者をはじめ、何とローマ教皇すら異議を唱えています。コーポレート・ガバナンスも、おのずとその影響を受けると考えられます。

 過去20年にわたり、日本はもっぱらアングロ・サクソン流のコーポレート・ガバナンスを手本にしてきました。それは、「レッセ・フェール」(自由放任主義)、少々乱暴な言い方をすれば、儲けるためには、法律を犯さない限り、何をやってもかまわない、最終的には「見えざる手」――要するに市場メカニズムですね――がうまく調整してくれる、という考え方に基づいています。

 しかし、時代は間違いなく変わりつつあります。萌芽的な例を挙げれば、2012年7月に発表された『ケイ・レビュー』です。これは、イギリス政府から要請されて、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授のジョン・ケイが、機関投資家の短期主義、株式市場の構造的問題、ガバナンス上の課題などについて調査・分析した報告書です。

 その結論を一言で言うと、「イギリスの資本市場は、イギリス企業の競争力強化に貢献していない」というものでした。それだけでなく、「短期主義が蔓延して、企業経営の足を引っ張っている」と警鐘を鳴らしています。日本も同様ではないですか。

 もともとイギリスはアメリカに比べて、コーポレート・ガバナンス改革に積極的でしたが、当のアングロ・サクソンからこうした批判や反省が出されたことは、注目に値するものです。

――昨2014年2月、機関投資家に投資先企業の持続的成長を促す行動を求める「日本版スチュワードシップ・コード」が発表されました。さらに一歩進んで、日本企業の独自性や長所を損なうことなく、グローバルに通用するガバナンス・モデルの構築は実現可能でしょうか。

 そのヒントとなりうるのが、ミシェル・アルベールの言う「ライン型資本主義」でしょう。彼は1991年に著した『資本主義対資本主義』(竹内書店新社)のなかで、21世紀は、アメリカとイギリスにおける「ネオアメリカ型資本主義」と、日本を含めたドイツやスイスに見られる「ライン型資本主義」が相剋する世紀になるだろうと述べています。

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