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田中秀征 政権ウォッチ

冷戦の檻から解放された二匹の猛獣
世界の無秩序化に歯止めはかかるか?

田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]
【第274回・最終回】 2015年3月26日
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ブッシュ大統領とゴルバチョフ大統領。1989年マルタ会談の冷戦終結宣言後に行われた1990年のヘルシンキ会談にて

 「われわれは、米ソ冷戦の終結が世界の政治や軍事に大きな好影響をもたらすとして歓迎したが、反面それが世界の経済に与える影響について冷静に予想し検討したと言えるだろうか」

 宮沢喜一元首相は私にこんな趣旨のことを言った。1994年に「自社さ政権」が始まったころだったと思う。

 89年に米ソの冷戦終結が宣言され、その11月に東西分断の象徴的な存在であったベルリンの壁が崩壊した。すると、あっという間に東欧が次々と体制転換を果たし巨大なソ連邦も解体してしまった。

 半世紀近く続いた厳しい東西冷戦を知る世代にとっては、こんなにも早く冷戦が終わることは想定外であった。ほとんどの人は、これで第三次世界大戦も核戦争も回避され平和な世界が到来すると信じたのだ。

 その直後の90年8月、イラクがクウェートに侵攻すると、国際社会は一丸となってイラクに立ち向かって湾岸戦争で撃退。冷戦後の世界に一段と明るい展望を可能にしたのであった。折から首相に就任した宮沢氏は所信表明演説で「新しい世界平和秩序の構築」を内外に向かって訴えたのである。

 しかし、その後の世界は決して思わしいものではなかった。むしろ冷戦期のほうが平和で安定していたのではないかと思われる面さえある。

 なぜそうなってしまったのか。

 それは冷戦の終結、冷戦体制の崩壊があまりにも急激で大規模であったために、それに備える政治の構想力が追いつかなかったからであろう。

 新しい家の設計図がないまま古い家が壊されてしまったということだ。

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田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]

1940年長野県生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒業。
83年、衆議院議員初当選。93年6月、新党さきがけ結成、代表代行。
細川政権発足時、首相特別補佐。第一次橋本内閣、経済企画庁長官。
現在、福山大学客員教授、「民権塾」塾長。


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かつて首相特別補佐として細川政権を支えた田中秀征が、期待と不安に溢れた現政権の動向を鋭く斬り込む週刊コラム。刻一刻と動く政局をウォッチしていく。

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