ケーススタディ(1)ルネサス エレクトロニクス
日本企業初となる人民元の資金管理制度を導入
 

ルネサス エレクトロニクス
企画本部 経理・財務統括部
財務部長 近見 祥

 当社は安全・安心・快適で環境に優しい社会の構築を使命に、自動車分野、産業・家電分野、OA・ICT分野を注力分野として、半導体の研究、開発、製造、販売、サポートを行っています。世界トップ・シェアを誇る自動車分野では、エンジンや車体などの制御向けと、カー・ナビゲーションなどの車載情報機器向けに製品を提供しています。

 これまで欧米、アジアに拠点を持ち、グローバルにビジネスを展開してきました。中国では製造地として北京と蘇州に生産工場を設立することから事業が始まりましたが、経済成長に伴い、主に欧米企業、日本企業の生産工場向け販売を現地で行うことから販売拠点も拡充してきました。その後、中国の現地企業も事業を拡大するなかで、現在は現地企業向けの重要な販売拠点として位置付けが変化しています。

 こうした状況下、当社は2014年12月、中国と日本間で人民元を融通し合う資金管理制度を導入しました。上海自由貿易区にある現地法人が中国の現地法人の資金を一括管理したうえで、日本と相互に人民元資金を融通するものです。「資金プーリング」の仕組みを使って、中国に滞留する資金を日本に送金するだけでなく、日本の資金を中国に送金することも可能になりました。

 中国に限らず、海外拠点の資金管理・運用はこれまで現地法人が各様に実施してきました。現在当社ではグローバル・コントロール強化を進めており、その施策の一つとして資金管理・運用の一元化に着手しています。特に中国については、さまざまな制約がありましたが、 2014年2月に規制が緩和されたことで、今回の仕組みが実現しました。

 日本企業としては初めての取り組みとして、国内外から反響がありましたが、制度設計とシステム構築は金融機関に拠るところが大きいので、銀行の選定に当たっては、キャッシュ・マネジメント・プロダクトでの経験と実績、サポート体制などを重要視しました。みずほ銀行は、当社が置かれている財務面での課題を的確に把握し、ニーズに合った提案と短期間での稼働を実現していただきました。今後は、一元化で集中した資金をグローバルで有効活用していきたいと考えています。