本連載でこれまで紹介した三菱東京UFJ銀行、P&G、NTTデータの例のように、「社員を動かすウェブ」づくりに取り組み、一定の成果を出している企業がある。かたや、取り組みながらも、問題を思うように解決できず、今後の方策に悩んでいる企業も多いことだろう。

 そこで、これまで紹介した成功例を主なヒントとして、今後どう取り組んでいけばよいのか議論したい。

日本企業の社員の一体感は
18か国中最下位!

 情報洪水、社員の一体感の欠如、心の病、人材流出など、社内の問題が噴出している。組織内の不信と不満の大きな原因の一つが、社内コミュニケーションだ。

 従業員は押付け的な本社に不信を抱き、バラバラで助けてくれない現場に不満を持っている。経営者・管理職は、会社から心が離れ、まちまちな方向に動く従業員に失望している。そんな話を聞いたことのある方は少なくないだろう。

 コンサルタント会社タワーズペリンの調査によると、エンゲージメント(会社・組織との一体感・つながり感)が高いということは、会社の成長を実現するために社員一人一人が貢献への意欲を持っている状態を意味するのだという。

 しかし、同社の調査結果では、米国の21%に対し日本はわずか2%の社員しか高いエンゲージメントを持っていない。日本は調査 18カ国中なんと最下位である。人材難の一方で、いまや3年以内に辞める新入社員は3人に1人を超える。日本企業は危機に直面しているのだ。

 そして、うつなど精神的な病の率は上昇。しかも情報洪水の中で不満やストレスは増加している。経済危機のさなか、個人のストレスと組織内の不協和音は増幅される。

 また、日本をはじめとする主要先進国では、産業・市場の成熟化と産業構造の変化に伴い、情報・知識・スキルのやりとり・共有化が求められる。日本のように人件費などの事業コストが高い市場では、知識集約、付加価値向上が重要になる。