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黒田投手だけじゃない!スポーツ界“男気”列伝

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第110回】 2015年3月28日
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 球春である。先にJリーグが開幕し、春のセンバツ大会も盛り上がってきた。そしていよいよプロ野球も開幕。MLBも始まる。月が変われば六大学野球をはじめ、東都、首都、神奈川大学リーグも始まる。楽しみだね。

 開幕までの長いあいだ、とりわけストーブリーグ(シーズン終了から選手の移籍などが決まるまでの時期)の話題を集めたのが、黒田博樹選手の広島復帰だった。

 黒田投手は二〇〇八年に広島からLAドジャースに移籍。二〇一二年から昨年までは名門ニューヨークヤンキースに在籍し、メジャー通算で七九勝をあげた投手だ。しかも、五年連続二桁勝利というおまけ付き。メジャーに挑戦した日本人投手の誰も達成できなかった偉業だ。日米通算では一八二勝を記録している。

 折り紙付きの実績を残した黒田投手が、八年ぶりに日本球界に復帰する。松坂大輔投手の復帰もニュースだったが、残念ながらニュースバリューは黒田投手の比ではなかった。彼だって平成の怪物と呼ばれたのに。

 「驚いている」

 広島東洋カープの松田元オーナーですら、黒田投手の獲得が実現したときはこう語ったほどだ。何故かと言えば、在籍していたニューヨークヤンキースでの黒田投手の年俸は一六〇〇万ドル(約十九億円)だったが、それ以上の額を提示し移籍交渉するチームがあるなか、黒田投手は年俸四億円で広島への復帰を決めたからである。すごいぞ、二〇億を蹴って四億を選んだんだぞ。

 でも、黒田投手がカープファンを泣かせたのは、お金の問題ではなかった。

〈年齢的な部分を考えても残りの野球人生は長くないと思っていますし、いつ最後の登板になってもいいという気持ちでやっています。一球一球にどれだけの気持ちを込めて投げられるかと考えたときに、カープのユニフォームを着て投げて最後の一球になったほうが、後悔がないと思い、復帰を決断しました〉(入団会見より)

 いずれ引退する日がきても、最後の試合はカープファンの前で投げたいとの思いにファンは泣かされた。二〇〇六年に初めてFA権(他球団と移籍交渉ができる権利)を取得しメジャー挑戦を考えたときもチーム残留を望むファンの声に応え、黒田投手は広島に残ったという経緯もある。ファンのために――、という思いが強い選手なのだ黒田投手は。

 「自分の中のどこかで、もし、今年、アメリカに残って結果が出なければ引退しないといけないと思っていました。そういうかたちになったら、何か引っかかる部分があったんじゃないかなと思ったので、それなら広島に戻って、日本の野球に少しでもプラスになることができればいいなと思ったんです」

 桑田真澄さんとの対談でも、黒田投手はこう言っている。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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