4月から始まる「機能性表示食品制度」。科学的根拠を国に提出すれば、健康食品やサプリなどが何に効くのか、具体的な「機能」を謳える制度だ。怪しげな宣伝文句ばかりが蔓延しているサプリ業界が健全化する大きな一歩だが、課題も多い。(取材・文/ノンフィクションライター 窪田順生)

4月から始まる「機能性表示食品制度」
健康食品やサプリのパラダイムシフトに

「機能性表示食品制度」とは、健康食品やサプリメント、そして果物などの農産物に含まれた成分のなかで、「機能」を有すると科学的根拠があるものを事前に国に届け出れば、事業者側の自己責任のもとでその「機能」の表示をすることができるようになるものだ。

「○○に効くサプリ」と謳える新制度は消費者の福音となるか?怪しい謳い文句に惑わされてきた消費者にとって、新制度はメリットになるのだろうか?
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 先週、公益社団法人日本通信販売協会が「機能性表示食品制度前夜祭」というイベントを開催したことからもわかるように、健康食品やサプリメント業界にとって、これはかなり大きなパラダイムシフトになると言われている。

 そう言われても、一般消費者の立場からすると、この新制度で自分たちの生活が何か大きく変わるかもというイメージはほとんどないだろう。既に市場にはコーラやお茶などのトクホ商品が溢れており、「脂肪を吸収する」などの機能を表示している。おまけに、健康をテーマにしたテレビ番組などでは、「この成分には○○を良くする働きがあります」なんて情報が飛び交っている。ネットでも然りだ。

 何を今さら――。そんな印象を抱く人が大多数かもしれないが、実はこの新制度がうまく機能すれば、我々現代人の「健康」が大きく変わるかもしれないのだ。

 それをわかっていただくためには、まずは日本における健康食品やサプリメントの位置づけから知らなくてはいけない。

 世界のどこでもそうだろうが、日本でも古来、「体に良い食事」という概念があった。自然素材によって病気の予防や、疾患の改善みたいな考えも人々の間に根づいていたからだ。たとえば、カエデ科の落葉樹でメグスリノキの木というがある。これは服用すれば、かすみ目が治ったり、肝臓の調子が良くなったりという効果があるといわれており、大河ドラマにもなった黒田官兵衛の黒田家は、この木で目薬を販売して冨を築いたという逸話が残っている。

 だが、現代で黒田家のようなビジネスをすると、すぐに役所から待ったがかかり、最悪の場合、後ろに手がまわる。

 薬事法によって、口に入るもので「効果効能」が謳えるものというのは医薬品と定められているからだ。じゃあサプリメントや健康食品というのはなんなのかと思うかもしれないが、これを所管する法律はなく、あくまで「食品」という位置づけだ。

 法的な位置づけではスーパーなどに並ぶ普通の食品と同じなのだが、中身としては長い食文化のなかや研究で「機能」も認められている。かといって「薬」というほど強烈な効果効能があるわけでもない。つまり、これまでの健康食品やサプリメントというのは食品と薬の中間に位置しながらも、しっかりとしたアイデンティティのない、「グレーゾン」の存在だったのだ。

 いや、トクホという制度があるじゃないかと思うかもしれないが、莫大な開発費用がかかるうえ、謳える機能がかなり漠然としているという問題があった。