見え透いた投資詐欺に
なぜ高齢者は騙されるのか?

「なになに、タイへのエビ養殖で主婦から投資資金を募った詐欺師、600億も集めたやて?こっちがまじめに仕事してヒーコラやってるのに、詐欺師はオバハンを食い物にして、簡単に金集めよるな~~~!!!それにしても、世のおばはんは、なんでこんなに見え透いた詐欺に、毎回引っかかるんや???」

 世の中に投資詐欺事件は数あまたあるが、私が昔、最も衝撃を受けたのが、タイのエビ養殖での高利回りをうたって、主婦層を騙して何百億もの資金を集めた詐欺事件であった。そもそも今まで投資のとの字も知らなかった投資素人のおばさんが、なぜいきなりタイのエビ養殖に巨額の投資をするにいたったのか。

 投資詐欺といえば引っ掛かる被害者は大抵、「まさか自分は詐欺には引っ掛からない」と思ってきた投資には無縁だった投資のド素人、なかでも“普通のおばはん”や高齢者が多い。

 最近の事例では、運よく大学生の若者が逮捕されたが、驚いたことに被害者である高齢者の嘆願で不起訴処分になったという。なんでも、「私に親切に接してくれた子なのに、可哀想だ」と。高齢者は金を持っているが、暇を持て余して寂しい人も多いので、自分を必要としてくれる、自分を相手にしてくれる人に簡単に心を許し、コロリと騙されてしまうのだ。

一番大切な“投資インフラ”は、家計の財務大臣である“オバハン”の投資リテラシーを高めること。

 日本は莫大な個人金融資産が生きる投資に向かっていない、と嘆かれて長い年月が経つが、ようやくGPIFの改革など、投資に対する姿勢が変わってきた。しかしより基本的な社会の“投資インフラ”は、資金の出し手である一人一人が投資の基本的な知識を有することである。現実に目を向けてみれば、年金にしても銀行預金にしても、ミューチュアルファンドを買うにしても株や土地に投資するにしても、投資の知識がないままいつの間にか様々な詐欺師の食い物にされている人がほとんどである。

 ここで私が問題意識を感じるのは、日本の家計は主婦であるおばさんや金融資産の大半を持っている高齢者が握っているが、そんな“家計の財布”を握る人々が、投資のなんたるかを学んだことがないということだ。

 そこで、グローバルな金融機関に勤務経験を持ち、金融・投資に精通する私、“ミスター・サスペンダー”は立ち上がり、このような普通のおばさんですら興味を持って投資の勉強をしたくなる啓蒙に乗り出すことにした。

 本コラムの特徴は、その対象読者をド素人中のド素人、そもそも投資になど興味なく、投資の本など絶対に読まない普通のおばさんを対象とした点である。このため、私は自分の知る限り最も経済音痴である身近なオバハン、“ミセス・パンプキン”(私の母。他紙メディアでの人気育児コラムニスト)に登場してもらう。この“普通のオバハンの代表選手”であるミセス・パンプキンにDCFやレバレッジドバイアウト、企業価値やバリュエーションが解るように解説できたら、おおよそ、誰が読んでも理解可能な説明になると思うからだ。

 ここでは「普通のおばさん」に投資の基本を、至極簡単にわかり易くお伝えすることを目標に据える。と同時に、私がグローバル金融で経験してきた投資の教訓を交えつつ、親愛なる「ダイヤモンド・オンライン」の読者といった知的水準の高い皆様にも意義ある内容に仕立て上げるつもりである。

 “朗報!利回り20%のマンションを頭金無しでご購入頂けるチャンスです。ご契約の方には、現在300万円のキャッシュをプレゼントしております”等のトンデモ勧誘に引っ掛かる世の中の困った方達やおばさん達を、一人でも減らすことができれば、本望だ。

 それでは、ミセス・パンプキンをはじめとする“普通のおばさんたち”がファンドマネジャーとして羽ばたくための旅路に、出発することにしよう。