焼き鳥屋で、親子丼だけの客はなぜ困るのか

「鶏の脂」はどう料理すべきか―「プロの技」編つくねとぼんぼち。このつくねにアブラが……。ぼんぼちはお尻の先の部分。かりっとした歯触りのあとにジューシーなアブラの旨みが……

「親子丼だけのお客様おことわり」

 バードランドとその主人、和田利弘さんとの付き合いを思い返していたら、そんな文句を思い出した。

 まだ、バードランドが阿佐ヶ谷に、今の阿佐谷店の場所に一つだけあった頃、そこで知り合った。たまたま、隣で大学の先輩がバーをやっていた。雑誌の編集長だったが、社長と喧嘩して辞めて、バーを開いていた。そこに行くと、いつも、手前のこぎれいな焼き鳥屋に行列が。そして、親子丼だけ……の張り紙。今はさすがになくなったが、当時はそれがトレードマークのようだった。

 ちょっと傲慢?不思議に思いつつ、行くようになり、常連とはいわぬまでも親しい間柄になった。気がつけば本店は銀座、それもすきやばし次郎のお隣という場所に移り、弟子筋がいくつも店を開いたりして……。

 そんなわけで、ふだんは客であったり、店がはねたあとに一緒に飲んだりということで、真面目に焼き鳥について話したりしたことはなかったのだけど、今回、この連載のために素面で話をして、あれやこれやの謎が解けた。