中国政府は、低付加価値で、かつ、資源を浪費し環境破壊の元凶ともなりがちなアパレルや雑貨などの産業が、人民元の切り上げ、労働コストの増加そして規制強化によってある程度淘汰され、中国の産業構造が徐々に高付加価値に移転して行く、というシナリオを描いていたかと思います。

 しかし、今回の世界的な金融危機からくる、特に欧米諸国におけるこれほどの急激な需要減退は想定していなかったのでしょう。私の周辺でも、最近、ある上海の家具メーカーが欧米からの注文が軒並みキャンセルになったという話を聞きました。また、蘇州周辺の香港、台湾系の輸出工場への与信を行なっている香港系銀行の融資担当者からは、先週訪問した際には正常に稼動していた工場が、翌週に行ってみたところ夜逃げされてスッカラカンになっている、などということが頻発しているという話を聞きました。中国のメディアでも輸出関連企業の大型倒産のニュースが出始めています。

 最近のニュースから2つばかり、中国のメディアでも報道された大型倒産の例を紹介してみましょう。

46歳、負債150億円で破たん、
自殺した広東省の砂糖王

 2008年10月15日午後5時頃、「広東中谷糖業集団公司」総裁のマン貴雄(マン・グイション)は、23階の自宅から飛び降り自殺を図り死亡した(合掌)。このニュースを聞いた債権者たちは会社に殺到し、現地の裁判所は直ちに同社の全資産の仮差し押さえを行なった。

 同社は、マン貴雄(マン・グイション)が1996年に設立。広東省の南端に位置し、中国有数の砂糖キビの産地である湛江市で最大の製糖会社であった。創業当初は、広東省砂糖の卸売りからスタートし、製糖業に進出したのは2004年。同市ではこれまで国営会社が製糖業と砂糖の流通を独占してきたが、1999年からの民営化と自由化の波に乗って急拡大をし、マン貴雄(マン・グイション)は広東省の砂糖王といわれるまでになった。直近のデータでは資本金5600万元(8億4000万円)、総資産:13.8億元(207億元)、売上げ【2006年】10.8億元(162億円)、白糖年生産量20万トンという規模を誇っていた。

 経営破たんの直接のきっかけは、8月に期限を迎えた農業銀行からの借入れ9500万元(約14億円)が延長を拒否され返済を求められたことにある。9月には4500万元(約7億円)しか返済できず、その後も相当な返済圧力があったようである。逃亡を防ぐために外出時には常に債権者が派遣した見張りが張り付くなかで、相当不自由な生活を強いられていたとのことである。

 銀行が返済を迫った背景としては、全国的な総量規制で銀行自体が与信の削減を求められていたほかに、同社の経営自体も砂糖相場の下落でトン当たり900元の逆ザヤを強いられていた他、砂糖の先物にも手を出して多額の損失を出していたとの噂もある。おそらく銀行としては、もともと債務過多の中で赤字体質に陥った企業を最初の貸出回収のターゲットとしたのであろう。【情報元:新浪網】