DIAMOND CFO FORUM
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2015年4月6日
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砂川 伸幸 神戸大学大学院経営学研究科教授/京都大学経営管理大学院客員教授

Corporate Finance
コーポレート・ファイナンス
経営と財務:ネスレのケース

ネスレ・グローバル

 スイス国立銀行による為替管理政策の変更を受けて、対ユーロでスイスフランが急騰した。スイスフランが高く評価されるのは、スイスの国力が強いからである。現在、ソブリン格付は最上級のAAAにレーティングされている。スイスは、戦前から国や政府がデフォルトをしたことがない。プライベートバンクが有名で、金融が強いという事実もある。しかし、金融や財務だけで国は富まない。事業が金融や財務と結びついて、価値が生まれる。社会との協調も必要である。

 スイスを代表する事業会社といえば、ネスレである。1866年にアンリ・ネスレがミルク製品から始めた企業は、いまや世界最大の食品・飲料メーカーになった。同社は30万人を超える社員の95%以上が海外(スイス以外)で働くという真にグローバルな企業である。2013年度の売上高は922億スイスフラン(日本円で約9兆7,700億円)、営業利益は140億スイスフラン(約1兆4,900億円)、純利益は100億スイスフラン(約1兆600億円)。売上高営業利益率は15%を超える。過去10年間のオーガニック・グロースの平均は6.1%である。オーガニック・グロースとは、為替やM&Aなどの要因を調整した実質的な売上高の伸び率をいう。ネスレは、持続的な成長と高い利益率の双方を実現している財務的に優れた企業である。その本社は、人口が1万人ほどしかいないスイスのヴェヴェにある。

 ネスレ日本株式会社の本社は神戸にある。ネスレ日本の代表取締役社長兼CEOである高岡浩三氏は、神戸大学経営学部の卒業生で、私の先輩にあたる。同社には、神戸大学社会人MBAで学ぶ社員の方もおられる。そのようなご縁もあり、2014年10月5日に、現代経営学研究所の主催で「グローバルと現地・経営と財務管理:ネスレ日本に学ぶ」というワークショップを行った。目的は、ネスレの経営とファイナンス部門の役割について学び、今後の経営に活かすことである。その内容について、2回に分けて紹介させていただく。

ネスレ日本のCFO

 ネスレ日本のCFOであるトーマス・ケラー(Thomas Keller)氏は、スイスの出身である。大学卒業後ネスレに入社し、スイスで勤務した後、アジア・オセアニア圏で約20年間財務関係の仕事をしている。2014年春に来日して、ネスレ日本のCFOに就任された。日本で仕事をするのは初めてだが、日本企業や日本のビジネスについては、勉強する機会が多かったという。

 ケラー氏は、日本語をほとんど話さないが、ネスレ日本の仕事にはまったく支障がない。IFRSに則ったグローバル共通のネスレ会計原則(Nestlé Accounting Standard)があるため、来日してすぐにネスレ日本の財務状況を理解されたともいう。

 当初は、高岡さんにネスレのグローバル戦略とネスレ日本のマーケット戦略についてお話しいただき、ケラーさんには、ファイナンスについて話していただく予定であった。ところが、高岡さんが都合によりワークショップに参加できなくなった。ワークショップ当日は、CFOのケラーさんが、CEOの高岡さんのパートを担当された。ケラーさんの担当パートは、財務管理本部の中岡誠執行役員にお引き受けいただいた。中岡さんも経営学部の先輩である。

 十分な準備時間などなかったはずだが、ケラーさんはネスレの経営戦略とネスレ日本のマーケット戦略を分かりやすい英語で話してくださった。CFOはCEOが話すことを理解していなければならない。経営戦略やマーケット戦略を知っていなければ、CFOは務まらない。そのことを実感させてもらった。グローバルな経済情勢に詳しいことも印象に残っている。終始笑顔でアクティブなプレゼンテーションであった。

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