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為替市場透視眼鏡

1ドル100円に迫る円高でも
防衛介入の可能性が低い理由

週刊ダイヤモンド編集部
2008年2月13日
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 1ドル=100円が視界に入りつつある。100円防衛介入への期待が聞こえるが、今局面で介入は行なわれそうもない。確かに過去の対ドル介入水準(下図)を見ると、歴史的に125円以上でドル売り、それ以下はドル買いとなっており、特に100円は防衛ラインとして強く意識されるという心証が強かった。

 本題の前に最近の為替市場を確認しておこう。サブプライムローン問題の悪影響が広がり、米国経済の失速懸念が強まっている。経常赤字の米国で景気悪化・金利低下が進みドル安になる。これは円高の歴史的パターンだ。円は経常黒字国の通貨として、ドル安の相手方として上昇。特に景気悪化、株安など悲観的状況が高じるほど、円高に押しやられる。

 さらに今年は、対ドルですでに割高なユーロ、ポンド、加ドル、豪ドルなどが、自国経済・金利が下向くにつれ反落しそうだ。このとき円はこれらクロス通貨売りの相手としても、上昇圧力を受けることになる。市場はなにかと円高に傾きやすい。105円、100円に向かえば、ニュース報道もいっそう神経質に「危機」を書き立てる。それにあおられて個人投資家の一部が外貨資産の処分に動くと、95円までの急伸もありうる。

 それでもなぜ、為替介入はなさそうと判断されるのか。第1に、日本は長年のデフレの結果、内外インフレ調整後の「実質」では、今でもかなりの円安だ。下図で普段目にするドル/円(名目ベース)と実質ドル/円を見比べてほしい。第2に、対ドルで円高でも、ユーロや豪ドルなど他通貨に対する円安のため、主要通貨を貿易量で加重した円の総合レートは今も安い。この名目貿易加重レートを実質にすると、さらに円安ぶりが際立つ。

日本の為替介入と実質・貿易加重レート

 当局筋からは1ドル=100円になっても、実質・貿易加重ではまだまだ円安であり、介入は正当化されず必要もないとの声が聞かれる。日本がG7のホスト国であること、大統領選挙期間中の米国が日本の介入に反対といった政治的理由も指摘される。

 介入見送りへの失望が95円実現を招く一因になりそうな情勢だ。ただし、(1)悪性デフレに基づき計算した実質円レートでは、円の適正水準を割高に見過ぎる恐れがある。(2)ドル安にユーロなどのクロス通貨安が追随し、貿易加重レートも円高に振れる余地が大きい。(3)内外景況・市況の悪化と円高が連動して、円高リスクを見過ごせなくなる。以上の3点から、筆者は後手に回っての介入の可能性を排除しないで注視している。

(通貨ストラテジスト 田中泰輔)

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FX、外貨投資家のニーズに応えた為替投資家向けコラム。執筆には第一線のエコノミストを迎え、為替相場の動向を分析、今後の展望を予測する。

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