クラウドコンピューティングは、ICTベンダー自身にも従来の製品販売からサービス提供へと、ビジネスモデルの大きな転換を迫る。果たしてベンダー各社は、どのような事業戦略を描き、激戦市場を勝ち抜こうとしているのか。今回は日本マイクロソフトの取り組みを紹介する。

「クラウド3兄弟」を原動力に
対前年比2.5倍の成長率で推移

製品名から「ウィンドウズ」を外してまで<br />競合他社と手を組むマイクロソフトの狙いとは日本マイクロソフトの平野拓也代表執行役副社長(7月1日に代表執行役社長に就任予定)

「クラウド事業はチャレンジャーの姿勢で押し進めている」

 日本マイクロソフトの平野拓也代表執行役副社長は、取材の中で幾度も「チャレンジャー」という言葉を使った。

 マイクロソフトのグローバルでの企業向けクラウド事業は、2014年12月末の段階で6四半期連続で3桁の成長率を記録。すなわち倍々ゲーム以上の勢いで伸びており、2015年6月期(通期)の売上高は55億ドル規模になる見通しだ。

 平野氏によると、「日本も昨年来、グローバルを上回る対前年比2.5倍の成長率で推移している」と言う。まさに急成長中にもかかわらず、チャレンジャーとはどういうことか。

 それを紐解く前に、マイクロソフトのクラウド事業の中身を紹介しておこう。図に示したように、同社は全ての領域でクラウドサービス、およびそれに必要なツールを提供している。

製品名から「ウィンドウズ」を外してまで<br />競合他社と手を組むマイクロソフトの狙いとはマイクロソフトのクラウド事業の全体像(出所:日本マイクロソフト資料)

 中でも、サーバやソフトウェアを不特定多数が共有して利用する「パブリッククラウドサービス」では、ハードウェアを中心としたICT資源をサービスとして利用する「IaaS(Infrastructure as a Service)」およびソフトウェアの開発・実行基盤である「PaaS(Platform as a Service)」の両機能を持つ「Microsoft Azure」が代表格だ。

 これに加え、アプリケーションソフトウェアを利用する「SaaS(Software as a Service)」領域のオフィスツール「Microsoft Office 365」と、顧客情報管理(CRM)ツール「Microsoft Dynamics CRM Online」を前面に押し出しており、同社ではこれら3つのサービスを「クラウド3兄弟」と呼んでいる。