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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

サイバーセキュリティの強化は
企業を成長させる原動力になる

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第11回】 2015年4月13日
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 2014年8月には、サイバーセキュリティに年間450億円もの予算を計上していた「JPモルガン」もサイバー攻撃に遭いました。

 これほど巨額のお金をかけてもサイバー攻撃を防ぐことは難しいという事実をつきつけられた事件でした。この連載でも以前、「強固に見えるセキュリティ機能にも必ず突破する方法はあり、ハッカーの侵入を防ぐ完璧な防御策は、残念ながらありません。世界にはハック(不正侵入)されていることに気づいている企業と、気づいていない企業の2種類しかない」(本連載第5回)と書きましたが、この事件で改めてこのことを痛感しました。

 さらに2014年末には、「ソニー・ピクチャーズエンタテイメント」のネットワークがサイバー攻撃を受け、Twitterアカウントの乗っ取りや情報流出などの被害に遭いました。これによって同社の評判や評価はガタガタになりました。

 でも、これはまだ幕開けに過ぎません。今年はサイバー攻撃によって倒産する上場企業が出てもおかしくはないでしょう。それは、欧米に比べて危機管理が甘い日本企業かもしれないのです。

全部門、サプライチェーンも含めた
セキュリティ対策が不可欠

 こうしたなか、企業はトップマネジメントとしてサイバーセキュリティをとらえる必要性が高まっています。米国では、CEOの下にサイバーセキュリティを統括する「CSO(チーフ・セキュリティ・オフィサー)」や「CRO(チーフ・リスク・オフィサー)」を置く企業が増えています。

 というのも、セキュリティ対策は、総務部から法務部、マーケティング部まで、全部門が関係してくるからです。

 たとえば、会議室や駐車場などに落ちていたり、展示会で配られていたサンプルのUSBメモリを会社のPCにさしてしまったり、メールに貼ってあったリンクを無意識にクリックしてしまう社員もいるでしょう。もしかしたら、そこにはハッカーの罠が隠されているとも知らず…。

 そうしたリスクを避けるためにも、サイバー攻撃に関する最新情報を入手し、社員研修を総務部に行わせるのもCSOの役割の1つです。次々と新たなやり口が登場するため、セキュリティ対策も常にバージョンアップしていく必要があります。

 それには本社だけでなく、関連会社や取引先などのサプライチェーンも含まれます。ハッカーはセキュリティの弱い部分を探し出して攻撃を仕掛けるため、セキュリティがある程度しっかり行われている大企業の場合は、脆弱な取引先や協力会社が狙われます。

 前述した「ターゲット」の場合、ハッカーは取引先の空調会社から侵入しているのです。関係会社を含めたセキュリティ対策がいかに重要か、おわかりいただけるでしょう。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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