江戸料理に和食の真髄を探る
【第3回】 2015年4月13日 車 浮代(時代小説家/江戸料理研究家)

天麩羅「中清」(明治三年創業)を訪ねて

名物「雷神揚げ」の由来は
雷門の横にある雷神様の太鼓

雷神揚げ定食(芝海老と青柳の小柱の巨大かき揚げ、御飯、味噌椀、香の物)…3000円(なお、コース料理はお座敷でいただけます)

 『中清』の天婦羅は江戸前を貫き、天だねは築地で仕入れた新鮮な魚介類のみ。江戸時代、野菜を揚げたものは「精進揚げ」と言って、天婦羅とは別モノだったからです。

 定番は車海老、キス、穴子、メゴチで、今の季節ならギンポウや稚鮎が入るなど、多少変動します。くどくなり過ぎぬようブレンドされた胡麻油を使い、天つゆは上品に、丼タレはあっさりとした甘みに仕上げられています。

 名物の「雷神揚げ」は、ソフトボール大はあろうかという巨大かき揚げ。芝海老と青柳の貝柱がふんだんに入っていて、この厚みを均等に揚げるのは名人技です。

 かき揚げはそもそも、まかない料理だったとか。お客様にリクエストされてお出ししたところお店の名物になり、昭和に入って、常連だった仏文学者の辰野隆博士が、「雷門の横にある雷神様の太鼓に形が似ているから」と名付けてくださったのだそうです。

 他にも、文豪・永井荷風氏や、三代目と同級生だった作家で俳人の久保田万太郎氏、演劇界の巨匠北条秀司氏など、そうそうたる方々が「中清」を愛されたとか。

『天婦羅 中清』六代目・中川敬規(なかがわ・よしのり)さん

 由緒あるお店だけに、お見合、結納、披露宴、七五三、法事などに使われるお客様も多いそう。大広間の収容人数はは最大36名まで。

 特に披露宴は、「中清」の座敷で着替え、人力車で浅草寺で式を挙げ、戻って披露宴、という流れが人気のようです。

「最近はもっぱら外国からのお客様が増えました。特にタイからのお客様に喜んでいただいています」と六代目。どうやら人気ブロガーが書いたことにより、人気に火がついたようです。

 ここは、浅草の喧噪を逃れた異空間。明治、もしくは昭和の文豪になった気分で、江戸前の天婦羅を堪能してみてはいかがでしょうか。

 


 『中清』

◆店データ
住所:東京都台東区浅草1-39-13
TEL:03-3841-4015FAX03-3843-4556
定休日 火曜日および第2・4月曜日
営業時間 平日11:30~14:00 17:00~22:00/土日祝11:30~20:00
◆「中清」ホームページ
http://www.nakasei.biz/index.html

 

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車 浮代

(くるま・うきよ)

時代小説家/江戸料理研究家。新聞、TV、雑誌などで活躍中。著書に時代小説『蔦重 の教え』(飛鳥新社)、『江戸おかず 12ヵ月のレシピ』『今すぐつくれる江戸小鉢 レシピ』(講談社)、『"さ・し・す・せ・そ"で作る<江戸風>小鉢&おつまみレシ ピ』(PHP研究所)等がある。
オフシャルサイト http://kurumaukiyo.com
国際浮世絵学会会員 日本ペンクラブ会員


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健康・長寿にもつながる江戸時代に生まれた料理の数々。和食の原典ともいえる、江戸料理の醍醐味&真骨頂を、各種の老舗に学びます。

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