まずは「わたくし」から
始めてみよう

 あなたは、自分のことを何と呼んでいるだろうか。「わたし」「わたくし」「自分」「僕」「あたし」など、多くのパターンが考えられる。

『接客・商談の一流プロに学ぶ! お客様の心を動かす敬語と話し方』で取材をした8名の接客プロにこの質問をぶつけたところ、全員の回答が「わたくし」だった。場面や相手との関係で「わたし」というケースもあるようだが、基本は「わたくし」だ。自社を呼ぶ際も「わたくしども」とするケースが多い。

 取材の際に和光の西村啓子氏から伺った考え方が大変に参考になった。

「『私』という漢字の正しい読みは『わたし』ではないと習ったことがあります。『わたくし』を使うことで、その後に続く言葉も美しくなると教育されてきました」。

 これは筆者自身にとっても、話し方を学ぶ上で目から鱗のヒントになった。自分のことを少しゆっくりと丁寧な話し方で「わたくし」と言ってみよう。すると、その後の言葉までが自然に変わってくるのだ。具体的には以下のような感じだ。

[自分を「わたし」と呼ぶ場合]
わたしが担当します。
わたしが戸田です。

[自分を「わたくし」と呼ぶ場合]
わたくしが担当いたします。
わたくしが担当させていただきます。
わたくしが戸田でございます。
わたくし、戸田と申します。

「わたくし」と言うだけで、自然に言葉全体が丁寧になっていくことが実感できるだろう。実際に口に出して、ゆっくり話してみると違いがよくわかるはずだ。