一度上がった火の手はなかなか消えないかもしれない。

 6月8日付けの産経新聞の一面トップに、「与野党がそろい踏みでたばこ税の大幅増税に向けて動き出した」との記事が出ていた。2009年度に基礎年金の国庫負担率が現在の3分の1から2分の1に引き上げられることを受けて、2.3兆円の財源捻出が必要となる中、その有力な実現の手段として、たばこに白羽の矢が立った格好だ。総選挙を前に消費税率の引き上げを先送りできる話なので、与野党共に反対は出にくかろうし、「環境の福田」(?)も顔が立つ話だ。

 産経新聞の報道では、増税論議のきっかけは同紙の3月4日付け「正論」欄に日本財団の笹川陽平会長が寄稿した論文だという。その中で、笹川氏は「たばこ1箱の値段を平均1000円に値上げし、現在の消費量が維持されるならば、消費税4%に相当する9兆5000億円の税収増が見込まれる」との試算を紹介している。

 むろん値段が上がれば、消費量が減る可能性がある。だが、笹川氏いわく、仮に消費量が3分の1になっても3兆円の税収増が見込めるという。消費税を引き上げたい財務省からすれば、その手前においてフリーハンドで使える財源があるならば、それはそれで大歓迎だろう。また、社会保障費の伸びを抑制したい厚労族にとっては、文字通り「渡りに船」だろう。かくして時ならぬ与野党協調が、たばこ増税では実現するかもしれない。

英国では1箱なんと1297円
突出して安い日本のたばこ

 さて、たばこと言えば、喫煙者も最近はそうとう肩身の狭い思いをしている。私のオフィスは千代田区にあるが、ベランダに出ると、道を挟んだ向かい側のビル群のあちこちに、ベランダや外の階段で喫煙している人を多く見かける。たぶんオフィスの中は禁煙。そして、千代田区では路上喫煙は罰金の対象になる禁止行為だから、会社のベランダか外の階段しか喫煙の場所がないのだろう。ちょっと可哀想な気がする。

 私は生まれてこの方50年間、スモーカーだった時期はないが(理由は子供の頃健康に神経質だったからにすぎない)、喫煙者たちにひどく厳しい「エコ原理主義者」のような人たちにはあまりいいイメージを持っていない。彼らは、自然には優しいのかも知れないが、何やら妙に人間に厳しいことが多い気がする。経済の理屈として環境にも正しい価格を付けるべきだと思うが、運動としての「エコ」には殆ど共感しない。