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岸博幸のクリエイティブ国富論

ネットに転がるゴミ情報を信じた
「バンキシャ!」誤報事件は氷山の一角か

日テレ社長の引責辞任で考えた

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第32回】 2009年3月19日
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 日テレの久保社長が辞任しました。「真相報道バンキシャ!」という番組が、インターネット上の情報提供サイトに寄せられた情報を元に岐阜県の裏金疑惑を取材して放送したところ、情報提供者が虚偽の証言を行っていたことが明らかになり、その責任を取った形ですが、この辞任をどう考えるべきでしょうか。

 私は、久保社長は日本のジャーナリズムの自壊を戒め、これ以上の崩壊を防ぐために自らを犠牲にしたと考えています。日テレのみならずすべてのマスメディアの関係者がこの辞任を重く受け止めなくては、久保社長の辞任は犬死にになるし、日本のジャーナリズムの再生もあり得ないと思います。

 これまでにもマスメディアの不祥事はありました。記憶に新しいところでは関西テレビの「あるある大辞典」での事実ねつ造があります。しかし、「あるある」事件の本質は、“やらせ”という一言に集約されるように、番組制作の現場のモラルが低下していたことであり、放送局のコアコンピタンスである制作力の低下とは若干違うように思えます。

 それと比べて今回の「バンキシャ!」事件は、放送局のコアコンピタンスに関わる次元での深刻な問題ではないでしょうか。インターネットは未だ“情報のゴミ溜め”であって社会の公器たり得ないという認識なしに、そこに転がっていた情報を安直に信用して、裏取りも不十分なままで放送したと言わざるを得ず、放送局のコアコンピタンスである制作力の構成要素である取材/情報収集能力が大きく低下していることを示しているからです。

 だからこそ、この問題で日テレのみを非難すべきではないと思います。私はインターネットのヘビーユーザーであるとともに、毎朝各局のワイドショーを見ていますが、インターネット上のポータルサイトに出ていた話題が、翌日のワイドショーで報道されるというのに何度も出くわしています。単純にインターネットで先に報じられた場合も多いのでしょうが、インターネットをネタ元にして報道しているケースもあるのではないでしょうか。

 もちろん、インターネットを情報源として活用すべきでないと言う気はありません。私自身、情報収集の道具として最大限活用しています。ただ、ジャーナリズムの観点からは、そこで得た情報を活用するにはしっかりとした精査が必要なはずです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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