音楽産業はCD売上減をいかにカバーしたか
メディアビジネスのヒントが満載

「新聞」「出版」などと同様に古い産業である「音楽」、とくにレコード産業ですが、出版物と同じようにパッケージ・ソフトの売上高は減少を続けています。オーディオレコードの生産金額は、ピークが1998年の6075億円ですが、2013年は1985億円と、3分の1以下に減少しています。「音楽配信」によってCDの売り上げが減っているのだろうと考えがちですが、「音楽配信」のピークは2008年の1773億円がピークで、2013年は490億円まで急減しています。

 YouTubeなど無料視聴で満足するリスナーが増加しているからだと思われますが、本書によると、「サブスクリプション市場」は急増しており、やがて増勢に転じるはずだとしています。「サブスクリプション」とは「定額配信」のことで、2013年は27億円だったそうです。

「音楽」の別のページ「イベント」を見ると、意外なことに「コンサート市場規模」が急速に拡大していることがわかります。

 CD売上高のピークだった1998年の「コンサート市場規模」は711億円ですが、2013年は2318億円と、なんと3.3倍に増えています。2013年にCDの売り上げを初めて抜いたことになりますから、いちやく音楽産業の中心に座ったわけです。コンサート会場では物販がおこなわれ、CDやビデオだけでなく、Tシャツやパーカーなど、数千円の商品が売れます。利益率は高いでしょう。

 本書の特集Ⅰと特集Ⅱを読むと、音楽産業がインターネット動画を活用して告知し、ソーシャルメディアを連係させてファンクラブを大規模に組織化し、コンサートの動員に結び付けていることがわかります。

 音楽産業は一例ですが、このように本書をメディア産業の側から読むとビジネスのヒントを得ることができます。また、ほかの産業から見ると、メディア産業との連携によってビジネスを拡大するチャンスを発見することができるでしょう。

 本書は大型の年鑑として一覧に便利です。同時に電子書籍版も発行されています。電子書籍版では個別テーマで検索し、ジャンルを横断しながら読むことができます。