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トヨタの「お客様目線」に疑問符
焦るプリウスの低価格戦略

週刊ダイヤモンド編集部
2009年3月30日
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 トヨタ自動車のハイブリッド車、プリウスの価格に注目が集まっている。6年ぶりのフルモデルチェンジを機に、低価格戦略を打ち出したからだ。

 まず、前代未聞の奇策といわれているのが、新旧モデルの併売だ。5月の新型投入後も、233万円する旧(現行)型の内外装を簡素化し、190万円程度まで大幅に値下げして販売し続ける。

 そして開発中の新型はトヨタ独自の2モーターハイブリッドシステムを進化させ燃費を約38キロメートル/リットルに向上、排気量は300cc増え1800cc、車体も大型化したので、当初は250万円程度になると予想されていた。しかし販売店への事前通達によると、おおかたの予想を裏切り、なんと205万円という驚きの価格となった。

 プリウスの突然の低価格路線に憤りを隠せないのがホンダだ。189万円で発売後、1ヵ月半で約2万1000台、当初目標の3倍売れているホンダのハイブリッド車、インサイトへの対抗策と受け取れるからだ。「共にハイブリッド車を盛り上げ、ひいては自動車市場全体を活性化しなければいけない時期なのに、トヨタはまさに“インサイトつぶし”のようなことをやる。これでは互いに消耗戦になってしまう」(ホンダ関係者)。

 業界からも「現行モデルを買ったユーザーに失礼」と非難の声が上がっている。というのも現行型は国内で昨年9月から、原材料価格の高騰を理由に3%値上げされているのだ。値上げ直前には駆け込み需要もあり、その後もモデル末期であるにもかかわらず、根強いファンのおかげで2月末までに約4万1000台売れたからだ。さらに今後は中古車価格の下落も懸念される。

 だが、そもそもプリウスはこの価格で利益が出るのだろうか。

 新型はハイブリッド車としての性能が非常に上がっており、トヨタの技術の結晶であることは間違いない。プリウスの開発責任者である大塚明彦氏は「新型には莫大な開発リソースをかけた。ハイブリッドシステムの9割が新しい部品」と説明する。そして肝心なコストダウンについては、プリウスと他のガソリン車のボディパーツを共通化し、ハイブリッドシステムも、2020年代の全車種ハイブリッド化に向け量産することで効率を図る考えだ。

 プリウスの低価格戦略は豊田章男次期社長の判断が大きく影響している。豊田次期社長は「現場第一主義」「お客様目線」をモットーに掲げているが、今回の戦略は急激な販売不振に喘ぐディーラーの声を優先したかたちだ。と同時にホンダのインサイトの好調な売れ行きに対し、プリウスのハイブリッド車首位の地位を脅かされることへの焦りが明らかに見て取れる。

 薄利多売で新ユーザーを獲得する一方、既存ユーザーはないがしろにされていく。はたしてこの戦略は、トヨタを成功に導くのだろうか。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  柳澤里佳)

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