デフレ経済の真っただ中、究極の値下げ(?)とも言うべき、「高速道路の一部無料化」が発表されました。なぜか、あれだけの税金を投じて造った高速道路の通行料が、全ての車種を対象に、一部区間とはいえ “タダ”になるようです。高速道路がタダになる仕組みも、なぜタダにしなければならないのかという理由も、よくわからないというのが正直なところです。

 無料やタダと聞くと、子供の頃は何だか得をしたような気がしましたが、歳を重ねるごとに、「その裏に潜むワナ」を警戒するようになるものです。昔から「タダより高いものはない」と言いますが、それは「タダで何かをもらうと、代わりに物事を頼まれたりお礼に費用がかかったりして、かえって高くつく(大辞泉)」という意味です。

 確かに、インターネットで「○○無料」という甘い言葉に誘われてクリックしたら後で法外な請求を受けた、というニュースはいまも時々目にします。まさに、これは「タダより高いものはない」という実例です。また、女性を食事に誘い、好意で女性の分まで支払おうとしたら、頑なに固辞された、という経験を持つ方も少なくないと思います。悲しい現実ですが、これは、きっとその女性が、「タダより高い」ではなく、「タダより怖いものはない」と、感じたからではないでしょうか。

 このように、タダというものは、一般的に「高くつき」、「怖いもの」として捉えられているのです。

モノを買うことは、
その「価値」を買うこと

 高速道路には、建設費や修繕費、安全管理にかかる費用等、多額のコストがかかります。そのコストを、(全てではないにせよ)通行料で回収することを前提に考えた場合、適正な通行料(価格)がいくらになるか、詳しいことはわかりません。しかし、少なくともタダであるはずはありません。

 ホンダの創業者の本田宗一郎さんは、価格と価値について興味深いことを述べています。

 「商品というものは安ければ売れるというものではない」
 「その品質に見合った価格ならば、いたずらに安くなくても十分に売れていくものなのだ」
 「お金を出してある商品を買うということは、その価値を買うのだ」

 もちろん、高速道路は商品ではありませんから、ここでは商品をサービスに置き換えて考える必要がありますが、結論は同じです。このことについて少し考えてみようと思います。