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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

あなたの背後に悪霊が見える――。
弱った会社員をカモにする破滅の罠(上)

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第13回】 2015年4月28日
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 今回は、私生活や会社生活に悩みを抱える30代後半の男性を紹介したい。このエピソードは、この男性から5~6年のあいだに十数回聞かされたものだ。「迷える会社員」に近寄ってくる人のホンネについて、考えてみたい。

 予めお断りしておくが、今回のようなテーマについては、プライバシーの制約もあり、メディアや有識者は深入りをしないように思える。しかし、筆者は会社員がタテマエとホンネを使い分けるこの不気味な企業社会で生きていくために、大切なエッセンスが凝縮されているエピソードではないかと考え、今回、あえて読者諸氏にお届けすることにした。もしかすると記事の内容に違和感を覚える読者もいるかもしれないが、中立的な視点を心がけて報じたいと思うので、ご一読いただきたい。


あなたの背後には
親子3人の霊が見える――。

エリート会社員ほど実は心が弱いもの。世間には、そんな彼らに忍び寄る罠がたくさん蠢いている Photo:sunabesyou-Fotolia.com

 岡安律司(仮名・38歳)は、ここ数ヵ月間、週末になると妻と一緒に神奈川県内のある場所に向かう。「祖先の供養」や「前世治療」を行う男の家が、そこにはある。

 ここで「子どもが授かるように」と、夫婦で仏壇に祈るだという。2人は結婚し、6年が過ぎた。だが子どもがいない。不妊治療を行ったが、効果がない。

 男は、仏壇の前で正座をする2人の前でお経をあげる。30分ほどの間、夫婦は生まれてくる子を想像することを求められる。この想念が、子どもを誕生させるのだという。

 30分ほど後、男は大きな声を出す。「カーッ」と奇妙な声らしい。口の前に右手をあてがい、2本の指を立てる。そして、「ふっー」と声を出す。そのとき、2本の指を左右に振る。

 指の間から届く息を岡安が感じると、体から何かが抜け出る気がして、涙がしばらくの間止まらないのだという。帰りの車に乗るとき、妻の前で子どものように泣きじゃくるようだ。妻も泣き叫ぶ。そのとき車の外は嵐のようになり、1メートル前すら見えなくなるほどになるという。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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