前回、「経営という仕事」があるということをお話し、経営者として成功するためには、「正しい努力の積み重ね」が大切ということを説明しました。

 繰り返しになりますが、世の中には「経営」という仕事が存在します。では、「経営」という仕事は何なのでしょうか。前回も軽く触れましたが、私は、次の三つだと考えています。

 ①「企業の方向付け」
 ②「資源の最適配分」
 ③「人を動かす」

 ここからは、それぞれについて細かく説明していきます。そして、それについて必要な「正しい努力」とは何かを説明していきます。

「企業の方向付け」で会社の命運が決まる

優秀な経営者は「何をやるか、やめるか」を正しく判断できる小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 企業経営において、まず重要なことは「企業の方向付け」です。いわば戦略です。それは、①ビジョンや理念に基づいた上に、②外部環境、さらには、③企業の内部環境を分析して、方向付けを決めていくことなのです。これは、言うのは簡単ですが、実践するのは、それほど簡単なことではありません。ここでも「正しい努力」とは何かを知り、それを「積み重ねる」ことが必要なのです。

 この「方向付け」をどうするかによって、会社の命運が決まります。これは、会社がうまくいくかどうかの必要条件です。これが違っていたら、もう目もあてられません。どんなに優秀な人が働いていても、会社はおかしくなります。

 経営を「管理」だと考えている人は少なくありませんが、「管理」は正しい方向付けができているという前提があって生きてくるものです。方向付けが違っているのに正しい管理がなされてしまうと、むしろ会社は早く崖っぷちに到達するだけです。

「方向付け」をもう少し具体的に言うなら、「何をやるか、やめるかを決めること」です。それは会社全体の場合もあり、また部門を預かる立場にある人であれば、部門で何をやるか、やめるかを決めることでもあります。

 大切なのは、経営者が「何をやるか、やめるか」を正しく決める判断能力を持つことなのです。繰り返しますが、これは言うのは簡単ですが、やるのは決して簡単なことではないのです。方向づけには、短期的な方向づけ、ともう少し長い中長期的な方向づけがあります。ドラッカーの言う「マーケティング」と「イノベーション」に対応していると私は考えています。