数年前の“転職ブーム”も今はいずこ。景気の冷え込みに伴い、現在、転職市場は完全に“買い手市場”と化してしまっている。しかし、こんなときでも転職活動をしたい、しなければならない状況下にある人は大勢いることだろう。では、不況下でも転職を成功させるにはどうすればよいのだろうか。現在放映中のドラマ『エンゼルバンク~転職代理人』に登場するカリスマ転職代理人・海老沢康生のモデルでもある、リクルートエージェントフェローの海老原嗣生氏に「転職の心得」を教えてもらおう。海老原氏によると、転職活動に失敗する人にはある“共通点”があるそうだ。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子、撮影/宇佐見利明)

長期勤続率は増加傾向
無理な転職は勧めない

――不況の影響を受け、大企業をはじめとした正社員のリストラが始まっています。そうした雇用不安もあるなかで、転職市場も冷え込みが非常に厳しい状況です。雇用不安がある今、この時期にあえて転職活動を行うのはやはり避けるべきでしょうか?

海老原嗣生
えびはら・つぐお/ニッチモ代表取締役『HRmics』編集長、リクルートエージェント ソーシャルエグゼクティブ。1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。事業企画や新規事業立上げに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「WORKS」編集長に。2003年よりリクルートエイブリック(現リクルートエージェント)にて数々の新規事業企画と推進、人事制度設計等に携わる。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。

 大企業などにおける大規模なリストラが話題となっていますが、これはマスコミが大げさに報じているに過ぎません。実際に数万人規模の人員削減案が出たとしても、大部分は関連会社への出向や希望退職が占めています。きちんと働いていれば、日本企業ではそう簡単に首を切られることはありませんので安心してください。

 さらに、数年前まで“転職ブーム”と騒がれていましたが、現在、勤続年数は長期化し、長期勤続率も上昇傾向にあります。50歳代で25年以上勤続している人の割合は約52%にのぼり、20年前の43%を大きく上回っている状況です。リストラされる可能性も低いのですから、不況下においては、このように現在勤めている会社で働き続ける方が賢明です。無理に転職をする必要はありません。

 しかし、現在勤めている会社の業績が悪化し、モチベーションが保てないといった理由などでどうしても辞めたいのならば、辞めるのも1つの選択肢でしょう。不況の影響を受けて、求人数と転職希望者数のミスマッチが起きていますが、実際の転職者数は数年前とほぼ変わっていません。不景気であっても転職はできます。「不景気だと転職できない人」がいるのは、好景気の時のように“ステップアップ”や“給与の増加”その他の条件の向上を望んでいるからなのです。

 自分のステップアップだけに焦点を当てなければ、世の中には今は無名でもこれから伸びていく有望企業は多数存在しています。私がいつも言っていることですが、「不景気のときはよい企業に出会える可能性が高い」ので、不景気の転職はある意味“チャンス”ともいえるでしょう。