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投資ファンドはどこに向かうのか 保田隆明

「守り」のMBOから「攻め」のMBOの時代へ【前編】

香山晋氏(コバレントマテリアル代表取締役社長)に聞く

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【第8回】 2008年2月28日
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ここ数年日本でもMBO(経営陣による企業買収)が増えてきており、件数ベースでは昨年は過去最高になった模様である。ただ、過去に日本で行われた規模の大きいMBO案件で、MBOを実行した理由として挙げられたものが「株主の目を気にせず思い切ったリストラをするため」というものが多かったため、MBOからは「業績不振」という言葉を連想しがちである。また、株式市場からは、MBOの目的として「敵対的買収防衛のため」と噂されることも少なくない。

MBOは仕方なく行うものであり、企業が自ら喜んでその選択肢を追求するということはイメージしにくい。しかし、東芝グループから独立を果たした東芝セラミックス(現:コバレントマテリアル)は、業績が好調な中、更なる成長を目指してわざわざ自らMBOという選択肢を取った企業である。日本企業がファンドを活用して今後の成長を模索するひとつのケーススタディとなると思われ、香山晋社長に話を伺った。今回から2回にわたって掲載する。

香山晋(コバレントマテリアル代表取締役社長)
香山晋(コバレントマテリアル代表取締役社長)東京大学卒。1969年、東芝入社後、半導体の研究開発に従事。執行役員上席常務を経て、2004年、東芝セラミックス代表取締役社長に就任。2007年6月、MBO(経営陣による企業買収)により東芝グループを離れ、コバレントマテリアルとして新たに発足。現在も同社社長を務める。

――このたび、MBOによって東芝から独立し、社名も東芝セラミックスからコバレントマテリアルに変更されましたが、MBOの背景などお聞かせください。

 まず、ひとつ面白いできごとを話すと、2月上旬に行われる半導体集積回路技術の国際学会「ISSCC(IEEE International Solid-State Circuits Conference)」で、今回初めてユニークなパネルが設けられる(当インタビューは1月下旬に実施)。それは、プライベートエクイティファンドに関するパネルであり、お題目は「Fight them or Invite them?」。私もパネラーを務めるが、もともとは技術の発表会のような学会において、こういうパネルが設けられたことは非常に興味深い。

 かつては、半導体産業は事業内容が非常にテクニカルであり、キャピタルインテンシブであることから、ファンドには向かないとされていた。それが、半導体という産業が大きな曲がり角に来ていて、その中でファンドというものの存在感が高まってきたと思う。そんな背景があっての今回の当社のMBOということになる。

業界再編、事業再生の解決策
としてのファンド活用

――業界の曲がり角の解決策としてファンドがひとつの選択肢であると?

 日本の多くの半導体企業の失敗はファイナンシャルな知識が不足していたことによる。従来の連続線上ではうまくいかない。何か改革しないといけない。ひとつは資金だが、資本(株主)構成、格付けや株価が制約になっており、なかなか動けないという側面がある。

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保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
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投資ファンドはどこに向かうのか 保田隆明

経済・金融分野のエバンジェリスト、保田隆明が、キーパーソンへインタビューを通して、海外と国内の投資ファンドの活動とその影響を検証していく。

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