これまで、乳がんや卵巣がんのリスク遺伝子であるBRCA1とBRCA2は、ミリアド社が独占していました。ブルームバーグ誌によると、2014年のミリアド社の売り上げの3分の2にあたる7.78億ドルは、BRCA検査による収益でした。ついにミリアド社の独占市場が開放され、競合企業が参入できるようになったのです。

 「Color Genomics」の目的は、健康な人も含めて、非常に安価な、医師が関与する遺伝子検査を、すべての人に提供することです。このビジネスで、今後、遺伝子検査が、個人の日々の健康づくりの計画のサービスの一部として定着する可能性があります。

この検査を受けるべき対象は全女性の1〜2%?
ビジネス至上主義ではないか、との批判も噴出

 ただし、誰もが「Color Genomics」に賛成しているわけではありません。

 米国立がん研究所によると、BRCA1およびBRCA2遺伝子の変異は、全乳がんの5%〜10%を占め、卵巣がんの約15%です。また、この変異を有するからといって、必ずしも、がんを発症することを意味しません。検査が安価になることにより、より多くの患者さんが利用することが可能になりますが、一部の専門家は、すべての女性が検査を受ける必要はないことを警告しています。

 ブルームバーグ誌に対して、アメリカがん協会(American Cancer Society)のデビー•サスロー局長は、すべての女性が検査を受ける必要はなく、乳がんまたは卵巣がんの家族歴を有するような高リスクの人だけが検査を検討するべきであると警告しています。

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-04-21/color-genomics-brings-245-breast-cancer-risk-test-kit-to-masses

 「Color Genomics」は医療としての遺伝学的検査が高価なために利用できない女性のために、「すべての女性プログラム(Every Woman Program)」を立ち上げました。このプログラムは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(University of California, San Francisco)、ワシントン大学メディカルセンター(University of Washington Medical Center)、ペンシルベニア大学アブラムソンがんセンター(Abramson Cancer Center at the University of Pennsylvania)という主要ながんセンターと提携し、検査を買う余裕のない女性に、無料で検査を提供します。なお、消費者が検査を購入するプロセスで、検査を買えない女性への寄付が選択できます。

https://getcolor.com/#/kit/access-for-all

 ところが、英国ワイヤード誌は、すべての女性が検査を受ける必要性について疑問を投げかけています。というのも、遺伝子が原因で発症するがんは、アルコールや肥満などのライフスタイルが原因で発症するがんに比べて、はるかに少ないためです。英国インペリアル·カレッジ·ロンドンの腫瘍外科のジェームズ·フラナガン博士は、「1〜2%の女性はこの検査を受ける価値がありますが、「Color Genomics」はお金を儲けるために、すべての女性に検査を受けるように要求している」と注意を促しています。

http://www.wired.co.uk/news/archive/2015-04/22/color-affordable-genetic-test

 医療としての遺伝子学的検査は、多分にビジネス的要素をはらみ、その是非が問われながらも、着実に一般市民の間に浸透していきつつあるようです。