「発想の転換」が生んだ
ブレークスルー

 こうして出雲社長は、2005年8月に株式会社ユーグレナを設立し、2005年12月に世界で初めてユーグレナの大量培養に成功します。そのブレークスルーポイントは、“発想の転換”にありました。

 それまでユーグレナは、「雑菌に脆い」という性質から、培養研究においては、「いかに培養環境をクリーンに保つか」ということに力が注がれてきました。培養環境をクリーンに保つためには、コストが膨大にかかります。もちろん当時は、資金的にゆとりがあったわけではありません。

 そこで、「いかに少ないコストで研究出来るか」ということを必死に考えたのです。つまり、“発想の転換”を余儀なくされたわけです。

 そこで注目したのは、「二酸化炭素濃度が高いほど、生育スピードが上がる」という、ユーグレナの性質でした。ユーグレナは、40%という高濃度の二酸化炭素の中でも生育できます。他の生物や雑菌は生きられない、そんな高濃度の二酸化炭素環境をつくることで、培養の阻害要因となっていた雑菌の問題をクリアしたのです。

まずは「食」を目的に。
その生産過程で「環境」にも寄与

 前述した通り、ユーグレナは、「食料問題」と「環境問題」という、ふたつの大きな社会問題解決の一助になることが期待されています。

 しかし、いずれの問題に対しても、ビジネス上大きな可能性があることから、逆に経営資本が分散して、「二兎を追うもの、一兎をも得ず」にならないかという心配もあります。そこで、出雲社長にこの点を伺ったところ、「食としてのユーグレナの可能性を探求すれば、自ずから環境にも寄与できる」という答えが返ってきました。

 つまり出雲社長は、ユーグレナの本質的な価値(目的)を「食」とし、ユーグレナを大量に生産するその過程(手段)において「環境」に寄与できると考えているのです。「二兎を追う」でも、「二者択一をする」でもない、「“目的”を明確にし、選択した“手段”を別のことにも応用していく」姿勢は、第11回で紹介したミュージックセキュリティーズの事例に類似するものを感じました。

 「食」としてのユーグレナの可能性とは、動物と植物の中間微生物であるという性質から、ビタミン、ミネラル、アミノ酸など、人間にとって必要な栄養素のほぼすべてを、“天然”で保有しているということです。

【図4】ユーグレナに含まれる栄養素
ユーグレナには、これだけ多くのビタミン、ミネラル、アミノ酸などが含まれている。
【図5】ユーグレナの栄養吸収効率
ユーグレナは、動物細胞であるため、植物細胞のような「細胞壁」を持っていない。「細胞膜」のみであるため、人間はその栄養素を直接吸収することができ、栄養吸収効率が非常に良い。
(C)株式会社ユーグレナ