年金だけでなく
保険の仕組みもよくわかる

 日本の年金は3階建てですが、厚生年金基金の代行など、非常にわかりにくい変則3階建てです。本書を読むと複雑な制度が理解でき、何も知らなかった内沢裕吉とともに覚えていくことができます。また、生命保険や医療保険などの隣接した保険制度や、個人事業者の国民年金、国民健康保険についても同時に考えられるように物語が工夫されています。

 ミュージシャンの主人公は個人事業主のはずです。年金などまったく考えていなかった彼は現実を知って頭を抱えますが、彼の所属する芸能事務所の社長はずいぶん前から手当てしていました。

「オレ、年金も貯金も土地もないだろ。この先、ロックができなくなったらどうやって食っていったらいいか不安で……」
「内沢、心配すんな」
(手帳を放る)
「なんだこれは?」
「おまえの年金手帳だよ。こんなこともあろうかと、おまえと会社を興したときから、ギャラから天引きして国民年金は払っているよ」
「ええっ」
「それだけじゃねえ。国民年金基金ってやつにも入っていて、国民年金と合わせれば、おまえは65歳から毎月20万円受け取れるはずだ」
「社長! ありがとよぉ~、恩に着るよぉ~」(24-25ページ)

 というわけで、すっかり安心した内沢裕吉の冒険が始まります。「国民年金基金」はサラリーマンには無縁なので知らない人が多いでしょう。本書をお読みくださいね。