世界初の年金は
オリンピックの報奨金だった?

 このように年金制度の仕組みがよくわかるのですが、じつは経済史も学べます。古代ギリシャのオリンピック優勝者への報奨金が史上初めての年金だったこと、中世ドイツのギルドで制度化されていたこと、16世紀イギリスの救貧法、19世紀ドイツ帝国のビスマルクによる社会保険制度の確立など、みるみる年金制度の歴史に詳しくなります。

 本書の後半は、内沢裕吉らが日本の戦国時代へタイムスリップし、北条氏康と織田信長が絡んできます。ここからは日本の貨幣と経済政策の歴史を知ることができます。馬場康夫さんは、貨幣を一元化して流通させる者が覇者となる、という歴史観で物語を構成しています。

 江戸時代以前は中国の銅銭を輸入して使用していたわけですが、金・銀・銅の国産化によって自国貨幣が流通し、交換レートも決まってきます。近世日本の貨幣史を横軸においた物語も面白く読めます。

『ZAi』の連載は「投資家ロックンローラー内沢裕吉」と改題して本書の後の物語が続きました。書籍化を待ちましょう。