経済閣僚をはじめとする大臣の発言は、株式市場、為替市場など資本市場の関係者が常に注目するところであり、時に株価や金利、為替レートの大きな変動材料になる。まして、新任の大臣の場合はなおさらだ。しかし、鳩山政権の面々は、必ずしも「市場との対話」には慣れていない方が多いだろう。また、そもそも市場(或いは広い意味での経済活動)がどんなものでどう動くのかというマーケット感覚の理解についてはかなりの個人差があるようだ。

 これまでのところ、マーケット感覚の観点で気になったのは、藤井裕久財務大臣、福島みずほ消費者・少子化担当大臣、そして、何と言っても亀井静香郵政・金融担当大臣だ。

藤井財務相は
正直すぎて説明過多

 藤井財務大臣は、かつて大蔵大臣の経験があるベテランだが、就任早々彼の発言は為替レートに大きな影響を与えた。

 藤井大臣は、先週末、鳩山首相に同行して訪ねたニューヨークで、自国通貨安を目指す政策を批判する発言を行い、これが日本が円安を目指さないこと、さらに、円売り介入に否定的であり円高を容認するということだという市場参加者の連想を呼んで、1ドル90円を割り込む円高のきっかけとなった。また、この為替の動向に対して「異常ではない」という認識を示したことから、円高の動きが正常で、介入に対しては反対なら、今後の為替レートが円高で構わないということなのだろうと腹の内を探られて更に円高が進んだ。

 週明けの28日になって円が対ドルで一時88円台を付けるに及んで、「ガイトナー米財務長官には強いドル政策は望ましいと申し上げた」、「為替は安定的であることが望ましい。最近の動きは、少し円高に偏ってきているという印象を持っている」とフォローを入れたが、今回は藤井財務相の発言によって円高が進んだという実績を作ってしまった。

 藤井大臣は、もともと為替介入に否定的であり、為替レートはある程度円高でも構わないという意見の持ち主だと目されていたこともあり、原則論について話した積もりが、相場材料として解釈されたのだろう。内心、ある程度は円高でも構わないという腹積もりだったのだと想像するが、自らの発言が相場を動かした形になったのは不本意だったのではないか(為替不介入主義者なら、そうでないと一貫しない)。