開店時間に店が開かない!
マレーシアのスタバで何が起きたか

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

接客スキルが低いのに顧客満足度は高いホテルが実践していたこと<br />接客業にスキルが必要なのは言うまでもない。しかし、それ以上に必要な要素がある Photo:naka-Fotolia.com

 筆者は朝、仕事前に近くのスターバックスに寄って、エスプレッソコーヒーを飲むのが日課だ。日本とは違って、ここマレーシアではスターバックスものんびりしていて、開店時間は午前8時だ。筆者はいつも開店直後に寄っていた。

 2週間前、そのスターバックスでは人事異動があって、ショップの責任者であるチーフ店員以下、全員が入れ替わった。

 その直後である。筆者がいつものように8時過ぎに店に行くと電気がついてない。エスプレッソマシンにもまだ布がかけられて、アルバイトと思しき店員はのんびり、座席の整理をしている。他の従業員も思いついたように開店準備を「のんびりと」行っていた。

 筆者が一番乗りだったため、働いている店員に「エスプレッソを頼める?」と尋ねてみると、彼女は「OK、OK」といいながら、マシンのスイッチを入れ、まだ明かりもついていない店内で、のんびりとコーヒーを淹れてくれた。

 筆者は心の中で「誰か気を利かせて電気くらいつけてくれないかな」と思っていた。

 そして、会計をしようとレジでお金を渡すと、彼女は困惑したようにレジをみて、何回かキーを叩いた後こういった。

「お金はいいです。レジ動かないから」

 筆者の頭は????だらけだった。サービスしてもらったのはあり難かったが、何が起こっているのか全く説明がない。そのうえ、筆者がコーヒーを頼んでいる間に、後ろには長蛇の列ができていた。彼女は彼らに、「ごめんね。レジ動かないから、注文聞けません」とだけ言うと、カウンター裏に引っ込んでしまった。

 残された客は唖然とし、やがてあきらめ顔で去っていった。そこで怒らないのはマレーシア人のいいところだとも思うが、だからこそ、こういう「接客の基本」が育たないのだと筆者は感じた。