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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

“チェンジ”の時代、イノベーションが
社会のルールも変える!

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第13回】 2015年6月8日
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十分なインセンティブは
モチベーションを高めるための世界標準

 シャープに限らず、日本企業がイノベーションを起こすためには、会社の固定観念やルールを変えていくことが必要です。先日、関西のメーカーの幹部にその話をしたのですが、「企業や社員に根づいた文化はなかなか変えられない」と言われました。

 本当にそうでしょうか。日本企業には優秀な人材が多く、社員に公正・透明で十分なインセンティブを与えれば、劇的に変わる可能性があると思います。実際、私の投資先の企業では、権限を与え、成果に見合った報酬を与える制度を導入したところ、わずか1四半期(3ヵ月)で全く違う会社に変身しました。社員を入れ替えたわけでもないのに、皆、人が変わったように精力的に働き始めたのです。

 社員のモチベーションを高める最もシンプルな処方箋は、インセンティブを与える制度を取り入れること。これは世界共通です。

 また、日本の企業では若者に対する偏見が強すぎるきらいがあります。経営層がよく言うのは、近頃の若者は「能力はあってもガツガツした野心に欠ける」「総じてヤル気が感じられない」といったこと。しかし、そんな若者にこそ、権限を委譲すべきなのです。なぜなら、自信と情熱は責任と権限を与えることで育つからです。

日本の労働生産性は先進国中、最下位。
未来に向けて何をすべきか

 社員一人ひとりの働きぶりが会社の経営はもとより、さらには社会全体にも大きな影響を与えることは言うまでもありませんが、その目安となるのが労働生産性です。労働生産性とは、社員1人がどれくらいの付加価値を生み出しているかを表す指標のこと。

 OECD(経済協力開発機構)の調査によると、各国の労働生産性で、先進国中、日本は最下位です。日本生産性本部による「日本の生産性の動向2014年版」を見ても、日本の労働生産性(就業者1人当たり名目付加価値)はOECD加盟34ヵ国中22位、主要先進7ヵ国では1994年から20年連続で最下位となっています。つまり、日本は他の先進国に比べ、労働生産性が極めて低いということなのです。

 こんな状況なのに、これから少子高齢化が本格化して労働人口が急激に減っていったら、いったいどうなってしまうのでしょう。だからこそ今、労働の効率化と生産性の向上という重要な課題に真剣に向き合わなければなりません。このテーマについては、今後も読者の皆さんと共に考えていきたいと思います。

※ご意見・ご感想は、齋藤ウィリアム浩幸氏のツイッター @whsaito まで。

(構成/河合起季)

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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