金融・財政政策のバランスは?

赤字国の通貨高と黒字国の通貨安はおかしい!<br />「金利水没」がもたらすいびつな市場赤字国の通貨高と黒字国の通貨安が加速するという、いびつな市場を創り出した「金利水没」の原因とは?
Photo:カシス-Fotolia.com

 2007年のサブプライム問題、2008年のリーマンショックで世界同時にバランスシート調整に入って以降、日米欧は当初、金融・財政政策共に緩和政策をとった。しかし、欧州債務危機を経て、先進各国は金融緩和・財政緊縮の流れに大きく舵を切った。このような大恐慌以来の同時バランスシート調整のストレス状況を救ったのは、中国を中心とした新興国の財政拡大による需要創出であった。

 今日、先進国は回復の流れにあるが、依然、需給ギャップを抱えた状況。いまや新興国が時間差をもってバランスシート調整に入ったなか、世界は需要不足に陥っている。しかし政策的には、先進国が財政拡大を封印したなか、かつてない金融緩和が行われている結果が世界の「金利水没」である。

 図表1は、主要国の金融財政政策の変遷を示したものだ。足元で先進国の財政緊縮が続くなか、新興国は中国がようやく拡張に舵を切ったものの、多くの国々は経常収支の赤字不安があるなかで、拡張気味に転換しにくい状況にある。

赤字国の通貨高と黒字国の通貨安はおかしい!<br />「金利水没」がもたらすいびつな市場 (資料) 各国中銀、IMFなどよりみずほ総合研究所作成
拡大画像表示

経常収支と為替のミスマッチ

 図表2は、各国の為替レートとIMFの2015年の経常収支予想を示す。ここで先進国のマッピングは、日欧は経常収支黒字で通貨安、米国は経常黒字で通貨高となる。1970年代以降の変動相場制下での環境は、基本的に経常黒字国が自国通貨高になり、経常赤字である米国が自国通貨安(ドル安)であった。