KDDIは3月末、かねて経営目標に掲げてきたau携帯電話の3000万契約を達成した。にもかかわらず、華々しく前面に、その成果を打ち出すのを控えざるを得ない事態に陥っている。

 目標達成の影で、業界全体が販売を自粛してきたプリペイド携帯電話を無料で配布する、なり振り構わぬ営業姿勢や、電池パック破裂の危険を知りながら回収発表まで半年も費やすまずい対応が、期末になって表面化したためだ。監督する立場の総務省も「シェア低下という副作用に苦しみながらも、悪癖の販売奨励金削減に取り組むNTTドコモなどと対照的。KDDIの体質に問題がないか注視していきたい」(中堅幹部)と厳しい視線を向けている。

総務省も問題視した
auのプリペイド急増

 電気通信事業者協会(TCA)の集計によると、今年3月末の携帯電話契約数は1億272万4500件(前年同月比6.2%増)。事業者別の内訳をみると、新規契約から解約を引いた純増数で、ソフトバンクが267万6500件と首位に立ち、3月末の累積契約数を1858万6200件に増やした。市場シェアは1年前の16.44%から18.09%に伸びている。

 次いで、純増数2位が、auとツーカーの合計で215万800件を伸ばしたKDDIだ。3月末の累積契約数は、auが3010万5100件、ツーカーが23万4100件で、市場シェアはauが1.06ポイント増の29.30%、ツーカーが0.68ポイント減の0.22%となっている。

 第3位は、NTTドコモだ。純増数は76万6600件で、累積契約数ではダントツの5338万7700件を確保したものの、市場シェアは2.47ポイント低下して51.97%にとどまった。新聞の中には、PHSの契約数を加えた市場シェアで、「NTTドコモが(1年前に比べて2.5%少ない)49.7%と初めて5割を割った」と報じたところもあった。

 このほか、昨年サービスを開始したイー・モバイルが41万1500件の契約を獲得し0.4%のシェアを得た。PHSのウィルコムは純増数1万8400件の461万5300件となっている。

 こうした中で、数字の上では、純増数第2位とまずまずの成績をあげ、数年越しの経営目標だった累積契約数3000万件を達成しながら、関係者の間でひんしゅくを買っているうえ、自らもその成果の宣伝の自粛を余儀なくされているのが、auだ。