人は予測なんてできない
――「身の丈」を知ってはじめて、リターンが出る

出口 少し前に読んだ本ですが、ホモサピエンスが負けてネアンデルタール人が生き残ってもちっとも不思議ではなかった、という内容が書かれていました。ホモサピエンスが生き残ったのは、少しだけ運がよかったから、それだけの理由だというのです。人間はそんなに賢い動物ではなく、たまたま生かされているものだ、と。

新井 なるほど。

いい会社は、<br />「お金による民主主義」を乗り越える

出口 つまり「自分は無知」だということを理解して、身の丈を感じることが大事なのだと思います。ですから持っている情報はすべて公開し、意見があればみなさんに指摘していただく。それではじめて、私たちはなんとかよちよち歩きができるのではないか、と。どれだけビジネス書を読んでも、どれだけ大学やMBAに行ったとしても同じではないか、と。

新井 投資の世界も同じです。「市場」は予測できないのに、運用のプロはまるで予測できるかのように立ち振る舞う。これってヘンですよね。
だから私たちは、投資先を信じることにしました。統計的にいっても、日本企業は約5%で成長している。だからきちんと投資すれば、リターンが出て、お客さんもメリットを享受できるはず。そのうえでリスクを回避できたら、結果は出るはずだと考えています。

出口 リスク回避とは、つまり分散投資をする、ということでしょうか。

新井 はい、そうです。私ね、この事業で「嘘はつきたくない」と思っているんです。ですから、正直にやって結果が出るようにする。そう考えると、社会が大きく成長していないいま、10%、20%のリターンは期待できないだろう、と。

出口 たまに儲かったとしても、同じ確率で落ちますね。

新井 そう。ずっと背伸びしていると、足がつるのと同じ。

出口 疲れていずれ倒れてしまいます。

新井 ええ。ですから私たちは、「投資先と苦楽を共にしよう」と考えたんです。いいとこ取りすると、結局成り立たないから。

出口 確かに。いいとこ取りは、長くは続かないものです。

(続く)

※次回は6月18日(木)掲載予定です。