7月下旬、ワシントンで米国と中国による「米中戦略・経済対話」が開催された。両政府の関係者が一堂に会して、数日間に亘って会議を行なうのは、今回が初めてだ。

 現在の世界を代表する2大国である米国と中国が、世界の政治・経済、さらには安全保障に絡む広範囲な問題について話し合うことは、まさに「世界の頂上会議=“G2”会議」の様相を呈している。

 では、その意義とは何だろうか? 今回の“G2”会議の背景には、米国と中国との独特の関係があることを忘れてはならない。

 かつての米ソ対立の冷戦時代、両者は核弾頭の保有数などを巡る軍事的な競争を行ないながら、経済的、政治的には相互に独立独歩の方針を持っていた。

 簡単に言えば、両者は互いに独立独歩の“対立関係”にあった。一方、現在の米国と中国を見ると、彼らは相互に軍事的な脅威を感じつつも、政治・経済など様々な面で相互依存の関係にあると言える。

 つまり、今の米中関係は、かつての米ソのような単純な対立関係ではない。両者の関係を有体に言うならば、相互依存度の高い「微妙な“対立関係”」とでも言えばわかり易い。

 つまり、大元ではお互いに気を許せない感情はあるものの、経済的には相互依存度が高いがゆえに、「相手の出方を見ながら、注意深く、表面上の友好関係を構築したい」と言うのがホンネと見るべきだ。

 たとえば、中国にとって最も重要な輸出先は現在でも米国であり、米国の景気動向は直接、輸出依存度の高い中国経済の動きに影響を与える。

 また、米国にとって米国債の最大の保有者は中国であり、中国政府の投資方針によっては、米国の長期金利が跳ね上がることも考えられる。

 仮に長期金利が急上昇すると、米国の景気低迷は一段と長期化することが想定される。それは、中国経済にとっても、輸出企業への打撃という格好で跳ね返ってくる。

 このように、お互いの景気動向や政策運営は複雑に絡み合っており、両政府は自分たちだけの利害に基づいて短絡的な政策運営を行なうことができない状況だ。

 米国と中国が、「2者で相手の手を読みながら、懸命にチェスをしている」という場面を思い浮かべるとよいだろう。