第二のジャック・マーを求めて<br />中国がつくった「創業大街」中国でIT企業が多く集まり、創業者の聖地ともいわれる北京市中関村エリアに新しくできた、「創業大街」(Inno Way)
Photo by Izuru Kato

「私は小学校の重要な試験に2回落ちた。中学の試験は3回失敗した。大学入試は3回落ちた」

 中国最大手のEコマース(電子商取引)、アリババグループの創業者ジャック・マー氏は、今年1月のスイス・ダボス会議で生い立ちをそのように説明していた。彼の失敗談はまだまだ続く。

「就職の応募は30回やって全部だめだった。警官の募集に5人応募して私だけ落ちた。『君は良くない』と言われた。KFC(ケンタッキー・フライド・チキン)が中国に進出してきたとき、24人応募して23人採用され、私だけ落ちた。ハーバード大学は10回落ちた」

「拒絶され続けると、どういうことになるのか」と尋ねられたマー氏は、「人はそれに慣れるものだ。今でも拒絶されている」と答えた。

 上記の失敗談は、彼の“得意ネタ”なのだと思われるが、マー氏は流ちょうな英語を駆使して、ダボスの聴衆を笑わせながら引き付けていた。大した「人たらし」である。「英語はどうやって学んだのか」と聞かれた彼はこう語った。

「12~13歳のときに突然英語が好きになった。しかし、杭州には英語学校も英語の本もなかった。私は9年間毎朝、杭州ホテルに行った。外国人旅行者が来るからだ。そこで無料のガイドをやり、代わりに彼らは英語を教えてくれた。その9年間で会った西洋からの旅行者たちが私の考え方を変えた。彼らの話の全てが、学校や両親から教わってきたことと違っていたからだ」

 こういったバイタリティ溢れるマー氏の生き方は、従来の中国社会の秩序とは親和性が低かったわけだが、現在の中国政府にとっては貴重なサクセスモデルになっている面がある。