子世帯に家を渡す
譲って住み替えはOK

 相続対策といえば、相続税が改正されて課税対象者が増えることが話題となり、その対策として二世帯住宅の人気が高まった。しかし今、それよりも緩やかな近居の方が人気だという。

「郊外の広い戸建ては子世帯に譲って、自分たちは手持ち資金で駅近のマンションを買って移り住むわけです。子育て中の若夫婦は、家賃なしで広い戸建てに住めるから満足。親世帯も気ままに便利な暮らしができるので満足。将来親のどちらかが要介護になったらよろしく、という含みがあります」

 駅近に買ったマンションは、要介護になって住めなくなれば、貸せばいい。便利なところであればたいてい借り手はつく。

 預貯金や現金を相続させるより、駅近マンションにすれば相続税評価額を圧縮できるから、その分が相続対策になるという考えだ。こうした住み替えは、今後、けっこう増えるのではないだろうか。

2

 

ローン返済に困ったら
小さく住み替える

「ところで最近、リバースモーゲージの広告が増えているでしょう。あれは、実はローン返済に困っているシニアが増加しているためなのです。例えば70歳で完済するように35年ローンを組む。55歳か60歳で定年退職する際に、退職金で残債をきれいにしようと考えていた。当初は残債をクリアしてなお、1000万~2000万円は手元に残るはずだった。けれど、予定が狂って退職金がそんなに出ないことが分かった、という人が多い。そんな層をターゲットにしているのです」

 退職してなお、住宅ローンの返済が残るのは困る。退職金を注ぎ込んで返済してもいいが、生活資金に窮するのは嫌だ。リバースモーゲージもいいが、いっそ、広いマンションを売り払って、小さく住み替えてしまおうという人も増えているそうだ。

「ここでも住まいが郊外か、都心かで展開が変わってきます。今は都心マンションなら中古でも高値で売れる。郊外マンションでバス便になると、売りにくいのです」

 櫻井氏は、自宅にポスティングされる仲介業者のチラシを見て、自宅の売り時が分かる方法を教えてくれた。

「『あなたのお住まいを売りませんか』と書いてあるのは、中古市場があまり動いていないとき。『このエリア限定で探しているお客さまがおられます』というのは、だいぶ高くなったとき。『あなたの家、5000万円で買い取ります』と具体的に値段が入るようになると、一番高くなったとき。今は3番目の一番高い時期に差し掛かっています」

 もし、いい立地に住宅を持っていて、売る必要がある人なら、いいタイミングなのだ。