管理費などの値上げで
郊外に住み替える人も

 首都圏では2000年ごろから都心マンションブームが起き、03年から04年にかけて良質で価格の安い都心マンションが大量に供給された。

「初期の都心マンションを買った人は、そろそろ15年目に差し掛かりますね。実は超高層マンションは、16年目から管理費と修繕積立金を大きく引き上げるところが多いのです。両方合わせて月4万円だったのが、16年目以降、月8万円になったりする。そこで、シニアであればそろそろ住み替えようかという算段になります」

 働いているうちは、職住接近に価値を置いて都心マンションを買う意味もあったが、リタイア後はそんなに高い維持費を払い続ける意味も薄くなる。
それより郊外の、シニアライフに適したマンションに移り住むという選択肢は、確かに有効だ。

「都心マンションを選んで住んでいる人は、株やFX、為替相場などやっていて経済センスが鋭い人が多いので、16年目の管理費値上げタイミングにも非常に敏感です。今は郊外のマンションの価格が低く抑えられたままの時期ですから、より有利な住み替えが可能になります」

郊外でシニアライフを
満喫できる住まい

 国土交通省の「住生活総合調査」によると、シニア夫婦の住み替え先で人気なのは、「街なか」「こだわらない」「都市の郊外」の順だ。年齢が上がるほど、都心志向が強くなる傾向があるが、果たして郊外に移り住んで、幸せに暮らせるのだろうか。

「もう通勤はしないのだから、住み替える先は郊外でもいいし、駅から離れていてもいい。その代わり、大型商業施設が歩いて行けるところにあるのが望ましい。暑い日も寒い日も雨の日も、大型商業施設の中は快適空調で散歩コースとして最適ですし、ベンチもあればトイレもある。同様に、歩いて行ける距離に、蔵書数が多い図書館があることも大事です」

3住まい選びで大事なことは?
(出所)国土交通省「平成25年住生活総合調査(速報集計)」
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 櫻井氏の言葉通り、高齢者が考える住宅や住環境で最も高いポイントとなっているのが、「買い物、医療・福祉・文化施設などの利便」である。次いで、「地震時の安全性」「災害時の避難のしやすさ」「治安、犯罪発生の防止」などの項目が並んでいる(左図)。

 一般にシニアライフに重要だと思われている「福祉、介護など生活支援サービスの状況」や、「近隣の人たちやコミュニティとの関わり」は、それよりも下位になっている。「自分で自分の住まいを決める」という気概のあるアクティブシニアは、「支えてもらう」ことより、「自分で動く」ことを重視する傾向があるようだ。

 「4つのシニア住み替えのパターンを見ていくと、・住み続ける不安・が見えてきます。本当に年を取って動けなくなったとき、不安が現実になっては困る。だから将来を見越して、早めに動くという考え方ですね」

 子どもが成長し、家を出ていくタイミングは、シニア住み替えを考える好機といえるだろう。

chuko

この記事が収録されている「週刊ダイヤモンド」別冊 2015年7月25日号『はじめての中古』の詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

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