大時化(しけ)は
五輪後にやって来る

 マンションの価格上昇が続いている。首都圏のマンション用地の仕入れ値は、2~3年前に比べ15%程度上昇。建設費も、職人不足や円高による資材価格上昇の影響などで30%程度上がっている。コスト増分を価格に上乗せすると、従来4000万円のマンションは25%程度の値上げをせざるを得ない状況だ。

ibataオウチーノ代表取締役社長 兼 CEO
井端純一
いばた・じゅんいち/同志社大学文学部新聞学(現メディア学)専攻卒。リクルートを経て、『週刊CHINTAI』『ZAGAT SURVEY』取締役編集長などを歴任。2003年、オウチーノを設立。著書に『広報・PR・パブリシティ』(電通)、『30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方』『10年後に絶対後悔しない中古一戸建ての選び方』(河出書房新社)など。

 それでも「売れる」と踏んで強気の値付けが行われているようだが、本当にこれでいいのか。「2020年の東京オリンピックまで価格上昇する」といわれるが、そうは問屋がおろすまい。不安の種はあちこちにある。

 思えば半世紀前の東京オリンピック前夜も、日本は“五輪景気”に沸いたが、祭りの後は失業率が増え、日本全体が喪失感に包まれた。しかし当時は、経済成長率が10%もあり底を支えた。対して今回は、1~2%の低成長率。待ち受ける経済の“大時化”にクッション材は存在しない。

 オリンピックの規模を縮小し、もっとシンプルに安く上げる運営方法に知恵を絞るべきだろう。今、金をかけるべきは「20年用インフラ」ではなく、その後の社会インフラ、例えば高齢者用の住宅などではないか。

 なにしろ世の中は、65を過ぎた高齢者に賃貸住宅を貸したがらない(私たちの運営する「住まいソムリエ」には、そうした相談が後を絶たない)。

 その上、東京は2040年には10年に比べ、65歳以上の高齢者が143.8万人も増える。対して現在でも、東京の高齢単身者の借家率は5割近くに達する。例えば、こういう人たちが安心して暮らせる住まいに転用できるよう、初めから選手村を設計すべきなのだ。国の威信をかけた華美な建築など無用。問題は量であり、高齢者難民の忌避なのだ。