ライフステージに合わせ
住まいを変える準備を

「日本の住宅、特に新築マンションは、構造、性能、設備のどれを取っても世界最先端を行っており、住戸内だけでなく建物全体において、太陽光発電や省エネ設計を取り入れるなどレベルが上がっています。ファミリー層が子育てに適した環境を選び、そこに新築マンションを求める傾向は、今後も続くでしょう。ただし、子育て期間が意外に短いことは、意識しておく必要があります」(大久保氏)

 ここにも、少子化の影響が出ている。子が1人だけであれば、小学校入学時に住宅を購入したとして、大学卒業時までの期間はたった15年間。

 その後はまた夫婦だけの世帯に戻る可能性が高い。このタイミングで、住み替えを考える人が出てくる。

「バリアフリーに向けたリフォームや、減築を考える人もいます。この時期の夫は現役のビジネスパーソンであることが多く、書斎や凝ったバスルームなどプライベート空間の充実に向かう人も多いですね」(大久保氏)

 人には家(ファーストプレイス)や職場・学校(セカンドプレイス)だけでなく、一個人としてくつろげる場所(サードプレイス)が必要だ。それを、親しい人とのカフェタイムに求める妻がいれば、リラックスできる広めの風呂に求める夫もいる。こうして住宅ニーズは、さらに細分化していく。

「注目すべきは古いマンションや団地をリノベーションして、内部を自分好みに一新する人が増えていることです。欧米では一般の人が買う住宅は中古であることが普通で、内部を好きに作り替えます。同じ傾向が強まってきたことで、ソフト面でも、日本の住宅はやがて欧米に並ぶはずです」(大久保氏)

 ライフステージに合わせ、住まいを変えていく。そのためにはマネープランをしっかり立てると同時に、人生の節目ごとに、進む道を自ら選び取る柔軟さと、切り替えの早さが必要だ。

「今は自分だけではなく、親の家をどうするか、空き家にしないために対策を迫られている人が少なくありません。対策は早めに。お金はためるだけでなく、必要な時期に使うことも大事。次の世代に向けた支援も、必要とされるタイミングを逃さず、きちんとしていくべきではないでしょうか」(大久保氏)