再生紙偽装問題で世間を騒がせた製紙業界に、新たな問題が浮上していることが本誌の取材でわかった。環境に配慮していない原料を購入している可能性が出てきたほか、一部の印刷用紙について第二の表示偽装とも取れる問題が明らかになった。そこに共通するのは、相変わらずのコンプライアンス意識の希薄さである。

 4月末、日本製紙、王子製紙など複数の国内製紙会社の環境認証担当者のあいだに激震が走った。森林の環境認証団体であるFSC(森林管理協議会)が、主要原料調達先であるオーストラリア・ガンズ社の木材チップを7月21日以降はFSC認証紙に混ぜてはならないとの勧告を出したのだ。

 FSCは日本で最も普及している森林認証。違法伐採の排除、環境保全や持続可能な森林管理を義務づけている。この認証がある製品は「環境に優しい」という錦の御旗を掲げることができるため、購入する側のインセンティブにもつながる。身近なところではセブン―イレブンのコピー用紙がすべてFSC認証紙だ。

 今回の勧告の影響は決して小さくない。日本が輸入している広葉樹チップのうち、ガンズ社のチップが1割強を占め、FSC認証紙の原料に関しては、そうとうな割合を占めているとされるからだ。現に製紙会社側からは「FSC製品は約3割減少する」(王子製紙)、「生産量は限定される」(大王製紙)と悲鳴が上がっており、昨今、普及しつつあったFSC認証紙は、大幅な減産に見舞われることになりかねない。

 もっとも、製紙会社側の対応を見ると脇が甘かったといえなくもない。

 今回の勧告の背景には、ガンズ社のチップが、適切に管理された植林から作られているか確認できていないためといわれている。ガンズ社は、貴重な原生林が多数存在する島であるタスマニアを地盤とする木材会社であり、環境団体のレインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表部の川上豊幸氏は「ガンズ社によって保護価値の高い原生林が伐採されていると以前から主張してきた。ここにきてようやくFSCに理解された可能性がある」と解説する。

 実際、2006年にオーストラリア連邦裁判所は、ウィーランタ州有林でのガンズ社による伐採事業がオナガイヌワシなどの絶滅危惧種に重大な影響を与えているとして、環境保護法違反であるとの判決を下している(上訴中)。もともとリスクはゼロでなかったのだ。