評価制度設計の難しさ

 この機会に、評価システムを見直すとしたら、課題となるのが評価制度の設計だ。欧米の評価システムにも詳しい平野氏によれば、欧米企業と比較すると、日本企業が陥りがちな問題があるという。

「評価に対する考え方が“真面目”すぎるのは問題です。例えば、営業担当の従業員の売り上げノルマを1億円とします。1億ならOKで、1億以下はだめ、というような運用をすると、大部分が1億を達成できなかった場合、組織全体のやる気がなくなり、簡単に評価できるはずの営業でさえ、評価システムの意味がなくなってしまいます」

 欧米での運用の仕方は、平均的な従業員を想定して評価基準を決めるのだという。

「まず、平均的な売り上げ目標を6000万円と仮定した場合、6000万円を達成したら、ハッピーになれるような評価基準を設定します。もし、1億以上売れた場合は、特別ボーナス的な扱いにします。そうすると、終わった時に、半数以上はハッピーになり、職場の雰囲気もよくなり、次につなぐことができます」

 つまり、評価制度自体に“遊び”を持たせるのが重要だという。達成できないと皆が不幸になってしまうような目標はよくない。成果主義がうまく機能しない大きな理由の1つがこのような理由だという。

「成果主義といっても、明確にすればよいというものでもありません。有能な社員ほど、成果を出すだけではなく、さまざまな目に見えない貢献をしているものです。それを細かく規定するのではなく、“遊び”の中でそうした貢献を評価点に加えるような仕組みにすることです」

 評価制度の設計にはこのような微妙なさじ加減が求められるという。試行錯誤する前に、専門家のサポートを受けるのも重要なステップになるようだ。

タレントマネジメントの勧め

 ホワイトカラーエグゼンプション法制化のタイミングに合わせて、平野氏が企業に導入を勧めるのがタレントマネジメントシステムだ。

 タレントマネジメントシステムは、評価とスキル管理の2つの機能がメインとなっている。評価機能だけであれば、成果を評価して報酬を査定して終わりだが、タレントマネジメントシステムではスキル管理も同時に行うことにより、評価結果と本人の保有するスキルを関連づけ、従業員の継続的なスキルアップを実現できる。

「評価とスキル管理を同時に行えば、評価の結果、従業員が目標を達成できなかった場合、なぜ目標を達成できなかったのか、その理由をその従業員の保有スキルから明らかにすることができ、次回の目標達成のために必要なスキルレベルと、そのトレーニング方法を提示することができます。評価とスキルが関連づけられているため、評価が低い場合は不足するスキルの強化につなげることができるのです」

 また、各従業員の保有スキルが管理されているため、あるポジションの人材が必要になった時に、社内から必要なスキルを持った人材を探し出すことも可能になり、サクセッションプランも実施しやすい。

「企業にとって適切な評価基準とスキルセットが用意できれば、後は我々のインフラによってフレキシブルに対応できます。ホワイトカラーエグゼンプションが導入されても、成果と報酬、そしてスキルレベルが関連づけられた、客観的な判断による制度運用が可能になり、訴訟などのリスクも軽減できます」

 評価結果とスキルのデータベースがあれば、評価者が変わっても制度の継続運用が可能だ。また、継続することによって運用の精度が向上し、リスクヘッジ効果もより高まる。

 ホワイトカラーエグゼンプションが制度化されようとしているこの時期は、従来の評価システムを見直すいい機会である。これを機にタレントマネジメントシステムを導入し、万全な評価システムを構築してはいかがだろうか。