あなたには、企業の真の実力を見抜く「目利き力」があるだろうか――。自分が勤める会社や取引先の会社に将来性があるかどうかを見極める目を持つことは、ビジネスマンにとって最も重要だ。アベノミクスで株価が上昇し、好調に見える日本企業だが、ビジネス環境の激変の中で「勝ち組」「負け組」の差が鮮明になっている。かつての超優良企業が、業績悪化に喘ぐケースも出始めた。倒産という最悪の事態は、ある日突然やって来るのだ。我々が会社の寿命を見抜く「目利き力」を身につけるにはどうしたらいいのか。実は、難しい財務諸表と睨めっこしなくても、ちょっと視点を変えればそれを見抜くことは可能だ。国内最大手の信用調査会社・帝国データバンクで長年企業の信用調査に携わり、このほど著書『「御社の寿命」あなたの将来は「目利き力」で決まる!』を上梓した藤森徹・情報統括部長が、「目利き力」のポイントを解説する。(構成/中村宏之・読売新聞東京本社調査研究本部主任研究員)

あなたの会社や取引先は大丈夫?
激動の時代に養うべき「目利き力」

帝国データバンクが明かす「御社の寿命」 <br />危ない会社を見抜く「目利き力」養成講座ちょっと視点を変えれば、難しい財務諸表と睨めっこする必要もなく、企業の将来性は確実に見えてくる

「目利き力」は、これからの日本企業の経営を語る上で、とても重要なキーワードになると思います。まずは、「目利き力」とは何かという点について、説明します。「目利き力」とは別の表現を用いれば「事業性評価」と言うことができます。つまり、「将来の成長が期待できて、今後伸びる会社を見出す力」であり、同時に「社会的な役割を終え、存続できない会社の実力を見抜く力」でもあります。

 なぜこれが重要なのかというと、少子高齢化の進展で、今後人口がどんどん減少して行く中、日本は「稼ぐ力」を身につけて、経済全体が着実に成長する仕組みを早急につくる必要があるからです。どの会社が本当に伸びるのか、逆に市場から退場せざるをないのか、それを見極めることは、自社や取引先の将来に人生を左右されかねないビジネスマンにとって、極めて大切です。金融庁や経済産業省など政府機関も、近年「目利き力」の重要性に注目しています。

 私は帝国データバンクで、これまで直面してきた様々な倒産事例をもとに「目利き力」の重要性を分析してきました。企業の信用調査という仕事柄、銀行や信用金庫など金融機関の関係者と情報交換を行うことは多いですが、「目利き力とは何か」を考えるとき、融資先企業に対する彼らの対応は非常に参考になります。

 お金をどんな会社に貸せば成長が見込め、銀行の収益にもつながるのか。あるいは、どんな会社に貸してはいけないのかなど、ビジネスの最前線で銀行は日々、それらを判断する場面に立っているからです。