5月3日、米国のマイクロソフトはヤフーの買収を白紙撤回すると発表した。これによって、約3ヵ月に及ぶ世紀の買収案件は、交渉決裂という形で一応の決着を見たことになる。

 今回の買収劇は、総額約440億ドル(邦貨換算約4兆5000億円)という途方もない規模であったことに加え、今後、最も成長性の高い情報・通信(IT)産業の有力企業であるマイクロソフトとヤフーが、双方の意地と知恵の限りを尽くしたM&A案件として世界中の注目を集めた。

 今回の案件の行方によっては、世界のIT産業の勢力地図が大きく変わる可能性もあった。それほどのインパクトを持った案件といえる。今回は買収断念となったものの、今後も有力企業同士のM&Aや提携などの動きは続くと見られる。そうした状況は、あたかも戦国時代の様相を連想させる。見ているだけでも興奮を覚えるような、将来に向けたダイナミズムがそこにある。

2社連合が実現すれば、
業界を二分する大勢力に

 今年1月31日、ソフト業界の巨人であるマイクロソフトが、ネット検索部門で世界第2位のヤフーに対して、現金と株式を合わせて総額4兆円を超える買収提案を行なった。この買収が実現すると、現在、ネット検索部門で圧倒的なシェアを誇るグーグルに対抗できる勢力が誕生することになる。

 つまり、グーグル対マイクロソフト・ヤフー連合という2大勢力が“がっぷり四つ”に組む構図ができあがる。それは、ネットを通じた広告やソフトウェアなど様々な点に計り知れない影響を与えることになる。IT業界の将来像を変えると言っても過言ではない。それほど大きな可能性を秘めた案件なのである。

 マイクロソフトがそれほどまでにヤフーを欲しがる理由は主に2つある。

 1つめは、マイクロソフトが得意とするコンピューターソフト分野の収益性に限界が見え始めていることだ。同社は、今でも世界最大のソフト企業であり、同分野の比類なき巨人であることは間違いない。しかし、新しいソフトが無償提供される動きが目立ち始めていることに加えて、同社1社でいつまでも独占的な地位を維持するためには、独占禁止法に対する配慮など大きなコストが必要になる。同社の高い成長性を維持してゆくためには、新しい収益分野を見つけ出す必要があったのである。